恋愛遊戯 その2
 

「それで、ジョンウォンとはどんな男なんだい」
若いときそのままに派手に結い上げた髪でチャンフィは尋ねた。
「ああ、領主さまそのものだったさ」
チャグンノミはチャンフィの差し出した器を引ったくるように奪うと、まるで何日も食べていないかのように飯を押し込んだ。

「はぁー喰った喰った」
「・・・領主さまそのもの・・・・」

「おい何を考えてるんだ、まだホンの若造だぞ」
器に取り残した飯粒に指を伸ばしながらチャグンノミが反対の手がチャンフィのチマに滑り込んだ。
「行儀が悪いね」
チャグンノミの手にパシッと音がした。


「春ももう終わりだね」
「ああ、もうすぐ暑くなる」


ーはぁ・・・細く長い指で躰を探られ、厚い胸板に乳房を擦り付ける・・・・。火照った躰を持て余すようにチャグンノミに目をやるー
「・・チッ・・・」
チャンフィの口から苛立ちが吐きだされた。

「俺でよかったら相手になるぜ」
チャグンノミの口元が歪んだ。
「誰がお前となんか」



数日後、チャンフィの家の裏口に先日とは見違えるなりで出入りするチャグンノミがいた。

「チャグンノミ誤解するんじゃないよ、あんな格好で出入りされちゃこっちの評判が悪くなる」
「わかってる、謀のためだ。俺だって店の女にゃ手は出さない」
「わかってじゃなの」

それぞれの胸の中にあの、妖しげな光を放つ切れ長の目の世にも美しく危険な男が音もなく居座った。
各自の思惑が己のものであるが如く、だが、姿なき両班社会の異端児、チョ・ウォンの魂がこの世に戻った瞬間であった。



潜り込んだ小舟は波間に漂うように見せ、黄海で客を大きな船に乗り換えさせた。
若い側近を連れた着の身着のままのチョ夫人であったが、匂い立つ美しさは隠しようもなかった。
航海の間船頭の誘いを巧みにかわし、下船するときにはそれとなく船主に顔つなぎをさせていた。
しかし僅かばかりの金は船賃で消え、天津に着く頃にはその日の飯代にも事欠く有様だった。
ひとまず貧しい木賃宿に身を落ち着かせ、騒動の顛末を集約した。
姦通罪は認めるものの、自分に暗殺者を放った夫、ユ長官は決して許すことは出来なかった。
落ち着きを取り戻す頃には、あの誰よりも頭の回転が速く、聡明なチョ夫人が蘇っていた。






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