<8> デート ?

次の日、私ウンヒは出社するとすぐにキムプロデューサーのデスクに向かった。
キムプロデューサーはもう出社していた。
「おはようございます。」
「あぁ、おはよう。投書だよね?あまりヒドイやつは抜いておいたから・・」
「ヒドイやつ?」
「適度に厳しいのは残してあるから。心して読んだほうがいいぞ」
「・・はい。ありがとうございます」
「あっ。今日夕方からあいているかな?新進気鋭のバイオリニストのリサイタルがあるんだ。
 今度番組で取り上げようと思っているんだけど、偵察がてら一緒に行く?」
「はい!」
「じゃ。正面玄関前に18時30分集合」

ちょっとぉ。番組始まって以来の出来事だわ。
やっと一人前扱いってことなのかしら。
取材を兼ねてって事よね? 私、頑張らなくっちゃ!!


私は、正面玄関前に約束の時刻の前についた。
後から来たサンヒョクは、朝とは違いおしゃれをしてきたウンヒにすこし驚いていた。
 (いつも髪をひとつにまとめているのに、髪を下ろすとずいぶん印象が変わるし、
  服もいつもの仕事着とちがって、淡い色のワンピースだとやわらかいイメージになるんだなぁ)
「おまたせ。ところでどうしたの?その格好?」
「だってデートですよね」
「えっ」
「時間外手当付くんですか?」
「あっ、いや・・」
「じゃ、デートです。行きましょう!」
キムプロデューサーの困っている顔を見て、私は笑いながら言った。
「 ・・冗談ですよ。キムプロデューサーだってスーツに着替えているじゃないですか」
「それは、行ったついでに、挨拶して顔を繋いでくるつもりだから・・」
「夜のリサイタルだったら、このくらいドレスアップした方がよくありません?」
「そう?」
「駄目ですか?駄目なら着替えてきます」
「いや、そのままでいいよ」

そのリサイタルの素晴らしいことといったら!!
私、途中から仕事を忘れてバイオリンの音色に引き込まれてしまった。
リサイタルが終わってもすぐに立ち上がれなかったくらい・・
キムプロデューサーは何も言わず、私が余韻に浸っている間に挨拶してきてしまったみたい。
これって、失敗なのかも・・

帰り道、私はまだまだ余韻に浸っていた。
すると、キムプロデューサー、急に近づいて来て私の肩に手を回し引き寄せた。
「!」
「・・車。ポーっと歩いていると轢かれるよ」
キムプロデューサーはすぐに肩から手を離した。


そっか・・キムプロデューサー、隣にいたんだぁ・・
えっ? 今まで、私の歩調に合わせてくれていたの?
私は思わず、キムプロデューサーの顔をジィーっと見てしまった。


「ん?なに?」
「・・あっ、ありがとうございます」


キムプロデューサーが静かな声で話し始めた。
「リサイタルって初めてだったの?・・その・・ずいぶんと感激していたみたいだから・・」
「そうなんです。恥ずかしながら・・CDとか局で録音されたものばかりで勉強していて・・」
「そう、それは問題だね。もっと生の演奏を聴いたほうがいいな」
「音楽って、人が演奏していたんですよねぇ・・なんか、すごくよかったです!」
「君って面白い事言うよね・・」
「よかったですよね?」
「それはそうだけれど、DJならもうちょっと違う角度の感想を言えるようにした方がいいよ」
「最初の感想は素直が一番なんです!」
サンヒョクは素直すぎる反応に、思わず吹き出していた。
「はいはい。(笑)また、こんな機会があれば行きたいか?」
「はい。ぜひ!」
「そういえば、ユ先輩ともよく行ったよなぁ・・連れてかれたって感じだったけれど・・」
「じゃ、今度は私を連れて行ってください」
「・・いいよ」


それから時折だけど、キムプロデューサーにコンサートやリサイタルに連れて行って頂いた。
どの会場に行ってもキムプロデューサーは知り合いがいて、この世界で長くお仕事をしている人って言う感じがした。
私なんかがくっ付いて行っていいのかしら・・
キムプロデューサーがインタビューの交渉なんかをしている間、時々は紹介してもらったけれど、私は邪魔にならないように待っていることが多かった。
そして、その後、一緒に食事をしたりお酒を飲んだりすることも増えてきた。


サンヒョクは廊下でユ先輩と久しぶりに会った。
「サンヒョク! 近頃、ウンヒとデートしているんだって? 聞いたぞ」
「・・誰がそんなことを言っているんですか?彼女の向学のためですよ・・若かりし頃、先輩ともよく行ったじゃないですか・・」
「フフ。ウンヒ、あれでなかなか可愛いからな。サンヒョクがライバルと知って泣いている奴もいるんだぞ」
「ライバルねえ・・」
「近頃人気も出てきたし・・」
「そうですね。何とか先輩の後をやってくれていますよ」
「お前の愛の賜物だな」
「なんですか?それ?」


私がDJを担当して1年が過ぎ、また夏を迎えようとしていた。

コンサートの後、キムプロデューサーとお酒を飲みに行った時、
キムプロデューサーは聞きにくそうに聞いてきた。
「・・ひとつ聞いてもいいかな? ・・どうしてそんなに元気なの?」
「ええ?」
「・・・その・・失恋・・」
私は忘れたい過去に触れられた気がして・・ちょっとムッとした。
「・・ゴメン・・無神経だった・・」
「いいですよ。じゃ、私も聞きますよ!」
「えっ・・いいよ。なんでも聞いて」
キムプロデューサーは私の目を見てそう答えた。
「・・冗談ですよ。キムプロデューサーにここで泣かれたら、どうしたらいいかわかりませんから・・」
「・・泣かないよ。大人をからかうものじゃないよ・・」
「あら。私だって大人です!」
「・・・」
「キムプロデューサーが聞いて欲しいなら、聞いてあげないこともないです。(笑)どうします?」
「・・また、今度にしておくよ。・・そのキムプロデューサーって言うの、なんとかならないかな?こういう場所で連呼されるのも・・」
「いやですか?」
「んー」
「じゃ、次から選んでください。キム先輩。サンヒョクお兄さん。サンヒョクさん。サンヒョク!!」
「・・やっぱりなんでもいいや・・」
「本当ですか?」
「一番最後以外なら・・」
「じゃ、こういう場所ではサンヒョクさんでどうですか?」
「じゃ、それで」
「私は?」
「えっ?」
「君とかお前じゃなくて、名前で呼んでください」
「ウンヒさん?」
「『ウンヒ』で手を打ってあげます!(笑)」

サンヒョクは思った。
(これって、確かにデ−トみたいだね・・ デートかな? ウンヒ)




***

やっと、ほのぼの系?の掛け合い漫才が始まりました。 
今回から『普通に』?スタートラインに立つ?スタートした?サンヒョクとウンヒです。^^v




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