<6> 突 入

そんな話ってないじゃない! 絶対、一言、言ってやるんだから!!
カンジュンサンという名前、建築関係で春川出身のユジンさん。
これだけからだって、その気になって調べれば、調べは付くんだから!
私ウンヒは玄関ドアのベルを押した。
「はぁい。どなた? あっ、以前にお会いしましたね。今日は何か?」
ユジンさんは極上の笑みを浮かべて迎えてくれる。こんな笑顔に負けないわ!
「私、ユジンさんにお話があります!」
ユジンさんは、当たり前のようにお部屋に招き入れてくれた。
・・とても素敵なお部屋だった。
そうよね、玄関先で話す話でもないし・・

私は話を切り出した。
「サンヒョクさんの事。ひどいじゃないですか!」
ユジンさんの表情が少し曇った気がした。
「・・あなた、サンヒョクの事、好きなのね?」
「・・そうじゃないですけれど・・
 婚約中の女の人をさらって結婚だなんて。そんな極悪非道の人と一緒になるなんてどうかしてます!
 サンヒョクさんはとってもいい人なのに、本当にいい人なのに、どうしてこんな事をするんですか!?」
ユジンさんは私には答えず、悲しそうな表情の後、ゆっくりと微笑んだ。
「私ね、これから仕事なの。ごめんなさいね。あの人が・・私に代わってお話を聞くわ」
指を差した先には、テラスのテーブルセットにゆったりと座った男の人がいた。
その人は、とても穏やかな表情をしていた。
ユジンさんは茶目っ気たっぷりに言った。
「私の取引先の上司ね、ミニョンさんと言うのだけれど、とっても怖い人なの。
 きっとキムプロデューサーより厳しいわ。
 今日、プレゼンテーションがあるんだけれど、何か足りないと容赦なく突っ込まれちゃうの。(笑) 
 資料の確認をしなくちゃいけないから・・では、あなた、行って来ます。お客様をお願いね」

その男の人は、とろけちゃうような笑みを浮かべて部屋に入ってきた。
「ユジン、ガンバってね。行ってらっしゃい」

えっ? 今、ユジンさん、あなたって言った?

「ようこそ、いらっしゃい。えっと、僕が極悪非道の人です。(笑)
 あの、ユジンはお茶の用意はしてくれましたか?」
「は?・・いいえ・」
「僕、目が不自由なので、少し時間がかかりますから、ソファでお待ちください」
その人は、目が不自由なんて感じさせないくらいスムーズにお茶を出してくれた。
「・・あの・お手数おかけします」
「さて、お話を伺いましょうか?(笑)」
「・・えっと・」
「サンヒョクから電話が来たんですよ。あなたがここに乗り込んでくるって。
 すごい行動力のある人なんですね。名前、聞いてもいいですか?」
「・・チェ・ウンヒです」
「サンヒョクの同僚の方だとか。さっきから思っていたんですが『憩いの夕べ』のDJをやっている方ですよね。 僕、よく聴いているんですよ」
「・・ありがとうございます。あの・・」
「あなたの言いたい事、ユジンも僕もよく分かっているつもりです。サンヒョクにはいつも感謝しています。」
「・・すみません。」
「ウンヒさんが謝る事はありません。
えっと、その行動力の原動力は何ですか? サンヒョクの事を想ってくれているんですよね?
 あっ。初対面で、こんな事聞いても答えにくいですか?(笑)」
「えっ?・・私、サンヒョクさんに大きな借りがあるんです」
「借りは返さないと気が済まない?(大笑)」
「・・どうして笑うんですか?」
「いや、失礼。同じことを言った人を知っているものですから・・」

私は意気込んできたはずなのに、なんだか身の置き所がないくらい恥ずかしかった。

ユジンさんの夫は柔らかい声で言った。
「ユジンが連絡したはずですから、もうすぐサンヒョクがこちらに来ると思います。
待っていてもらえますか?」

えっ? ここにキムプロデューサーが来るの? 
あちゃー。キムプロデューサーにどんな顔を合わせればいいのか・・

「僕も、そろそろ会社へ向かわないと・・」
「お仕事ですか?」
「そう。ユジンをいじめにね」
「えっ?」
「僕、ワークネームがミニョンなんです」
「は?」
ジュンサンは、ウンヒのコロコロ変わる表情を想像しながら、楽しそうに笑った。

玄関があき、キムプロデューサーの大声が聞こえてきた。
「ウンヒ! ここで何してるんだ?」
私は、自分の顔が熱くなっているのを感じ、消えてなくなってしまいたかった。

キムプロデューサーは部屋に入ってくると、私を一瞥して、ユジンさんの夫に向かった。
「お騒がせして、ゴメン。ジュンサン。 こいつ、思い込みが激しくて、後先考えなくて・・」
「サンヒョク、お嬢さんを《こいつ》呼ばわりはだめだよ(笑)」
「ジュンサン、ユジンは?」
「一足先に仕事へ行ったよ。サンヒョクと会えなくて残念がっていた。
 さて、お邪魔虫みたいだし、僕も出掛けるよ。お茶は自分で用意して。部屋は好きに使って。
 それと、ウンヒさんを叱らないで。よく話し合って仲良くして。彼女を泣かしたら承知しないぞ!」
「兄さん!!」
「じゃ、行って来ます」

キムプロデューサーと二人きりになってしまった。

極悪非道の人は、穏やかな素敵な笑顔の人で・・
恋人を奪った人とキムプロデューサーは仲良しで・・
その人は兄さん? 
私の頭の中はこんがらがっていた。

キムプロデューサーは、なかなか口をきいてくれなかった。

「兄さん?」
「・・・・説明してほしい?」
キムプロデューサーが私を睨んでいる? どうしよう・・
「その前に言うことは!」
「ごっ、ごめんなさい!」

私はあることに気が付いた。
キムプロデューサーに名前で呼んでもらったのは初めてだったことを。
この場では不謹慎だけど、ちょっとうれしい・・

サンヒョクは心の中で一言。
( ウンヒ、勘弁してくれよぉ・・ )


なんか言わなくちゃ・・・気まずい雰囲気に身動きさえ取れない。

キムプロデューサーはボソッと言った。私は顔を上げることも出来なかった。
「・・送ろうか?」
「・・はい?」

結局、私の家の前まで会話がなかった。

なんで? なんで? 何にも言わないの?
呆れてものが言えない? すごーく怒ってる?

キムプロデューサーは、やっと言葉を発した。私は身構える。
「・・明日、仕事ちゃんと来いよ」
「・・はい・・」

なんで怒んないのよぉ。




*****

書き始めた時はサンヒョクが少しでもユジン以外に振り向かされるところまででいいか〜と。^^
でも書き始めたら止まらなくて^^;;そのままずっと続けることになりました。
サンヒョクのお話..とは言っても、チュンサン&ユジンを避けて通るわけには行きません。
こんな感じですが関わりを持ってもらいました。







冬のソナタ To the Future 2005 Copyright©. All Rights. Reserved
当サイトのコンテンツを無断で転載・掲載する事は禁じています