<5> 気になる人

私ウンヒは、今朝はいつもより早起きをして、シャワーを浴びた。
頭の中がしゃっきりしてきたところで、ひとつ、心に決めた。
(私の心は疼かない訳じゃないけれど・・
 後ろを振り返ってばかりじゃ新しい一日が始まらないんだから、 元気にがんばろう。
 仕事に打ち込んで、失恋の痛みなんて吹っ飛ばしてやるわ。)
そんな心意気で、職場に向かった。

昨日の事。周りに人からいろいろ詮索されたし、いろいろ言われたけれど、
なんとか乗り切ることが出来た。


私は、キムプロデューサーに昨日のお詫びをしなくてはと思い、思い切ってランチにお誘いした。
キムプロデューサーは少し困った顔をしてから「いいよ」って。
そりゃ困るわよね・・
だって、私、仕事には穴を開けるし、上司の前なのにひどく泣いてしまって・・
ヘンに気を使わせちゃったんだもの・・お母さんは失礼な誤解はするし・・

レストランで向かい合わせに席に着いた。
昨日はいろいろありすぎて、何から言おうか迷っていると、キムプロデューサーが先に口を開いた。
「・・あの後、お母さんに叱られたの?」
「もう、こってり怒られました。・・母、過保護なんです」
「そんな事ないよ。親は子どもを心配するものだから。君も心配お掛けしないよう日頃から心掛けた方がいいよ」
「はあ・・お父さんみたいなこと言うんです。」
「やめてくれよ。(笑)僕は、君みたいな大きな娘、持った覚えがないぞ(笑)」
私は手で頬を触りながら言った。
「・・あの、昨夜、大丈夫でした?」
「ああ。あのくらい平気だよ」
「母が大変失礼しました。すみません」
「僕も、番組で君が急病だなんて、浅はかな嘘を言って、親御さんにはご心配をお掛けしてしまった訳だし・・」
「母、思い込み激しくて、頭でよく考えず思ったことすぐ行動するというか、猪突猛進な人なので・・」
「・・君って、ひょっとして、お母さん似だろう?(笑)」
「母ほどじゃないです!(笑)」

それからランチを取りながら、普通に話をしてしまった。
こんなの、はじめて。


私ったらなんかヘン・・あれから、キムプロデューサーがとても気になるの。
すれ違うだけでドキッとしたり、同僚や先輩方の『キムプロデューサー』『サンヒョク』の言葉がやたら耳に入る気がするの・・
以前みたいに睨まれている様な気はしない..目が合うと微笑んでくれるような気さえするのは、やっぱり気のせいかしら..
キムプロデューサーは必要以上話さないけれど、きついイヤミも、セクハラまがいの言葉も聞いたことがなかったわ。
私、どうして苦手だったのかしら・・


大きな借りはきちんと返さないと、すっきりしないものなのかしら?


ある日、廊下のベンチに座っていたら、キムプロデューサーの噂話が聞こえてきた。

『 サンヒョクさん、ウンヒの代わりに番組仕切ったんだって。器用な人だよな。
 裏方がいきなりマイクの前なんて、度胸あるっていうかさ。
 サンヒョクさんと言えば、とうとう、指輪を外したって聞いた?
 長かったよなあ。破談になってから4年も経ってるんだぜ。
 まあ、10年付き合った人と別れたら、あんなもんじゃないの? 
 披露宴の招待状を配ってからの白紙撤回なんて、耐えられないね・・
 ショックのあまり体調崩して入院までしたらしいよ。
 その時、辞表出したけど、上が不問に付したって。
 有能な奴は上も庇ってくれていいよな。俺だったらクビになっているよ。
 それもそうだけど、彼女のために、冬のスキー場での公開録音を 企画した事知ってる?
 伝説だよなぁ。 だって、うちはテレビじゃなくてラジオ局なんだぜ。
 何が評価されるかわかんないよな ――――――――――――』


へえ。あの指輪、本物の婚約指輪だったんだ・・


それからしばらく経ったある日。ユ先輩と話す機会を得た。
「先輩。キムプロデューサーは、なんで結婚しなかったんでしょう?」
「さあ? そう言う事は本人に聞かないと判らないね」
「まだ、ユジンさんを見る目が心が残っている気がしたんですけど。
 時々、切なさそうな瞳をしていますよね?」
「ウンヒはサンヒョクの事、よく見ているんだね。
 ここだけの話だよ。 ユジンさん、この年明けに結婚したらしいよ。
 その結婚にサンヒョクが協力したって所が、泣かせるじゃないか。
 サンヒョクと別れる原因になった彼、なんて言ったかな、
 そうそう、カンジュンサンとめでたくゴールインだってさ。
 これで少しは吹っ切れて、御守りみたいな指輪を外して、
 新しくスタートを切る気になったんじゃないかな」

話を聞いているうちに、私はすごく腹が立ってきた。
「何よ! それってひどいじゃない! なんでよ!キムプロデューサーが可哀想過ぎるわ!
 ユジンさんに、一言いってやらなきゃ気が済まないわ!」
頬を朱に染め真剣に怒っているウンヒを、ユ先輩はなだめる。
「おいおい。ウンヒが腹を立てても仕方ないぞ・・
 サンヒョクは可哀想といわれても迷惑なんだから。オイ、聞いてるか?」
私は先輩の言葉を最後まで聞かずに立ち上がった。


サンヒョクは、夜遅くなってから、ユ先輩からの電話を受けた。
「サンヒョクか? 俺、悪いことしちゃったのかも・・」
「こんな時間になんですか?」
「サンヒョク、怒るなよ?」
「何か言ってくれないとわかりませんよ」
「あの、今日、ウンヒに、お前とユジンさんの事しゃべっちゃったんだ。
 ウンヒさ、お前のこと、気になっているみたいだったし・・」
「いいですよ。局内じゃ有名な話だから、先輩からじゃなくても、
 そのうち耳に入りますよ。そんなことで電話してきたんですか?」
「この話、続きがあるんだ・・
 ウンヒ、『ユジンさんに一言、言ってやるっ』って。
 まさかとは思って、ミンウに連絡先聞いて、さっき電話したんだよ。 ウンヒ、本気っぽくてさ」
「・・先輩、ヤな予感がする・・」
「なっ、するだろ?」


サンヒョクは、どうしようか考えた。
ウンヒの携帯電話はつながらない。明日は、ウンヒ、仕事は休みのはず・・

(ウンヒ! 一言って・・なに考えてんだよ? まったく・・まさかな・・そこまではしないよな・・普通・・)

とりあえず受話器をとる。
(なんて言えばいいんだ? 新婚家庭に《殴り込みがかかる》かもなんて・・)
ユジンとジュンサンに迷惑がかからないことを願いながら、しどろもどろになりつつ電話をした。

二人は笑ってくれてはいたが・・




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かなり強引な展開です。大目に見てくださいね。
さて次回は・・行ってしまいましょうか!

今修正しながら思うこと。
これを書いていた時、キーボード入力にメチャクチャ時間がかかっていました。
お話の展開を考えると比べると数倍はかかっていました。あの頃に比べたら..進歩進歩♪




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