<21> 送別会


とうとう、私ウンヒのDJ最後に日がやって来た。
放送は順調に盛況で終えることが出来た。
放送終了とともに、私は番組のスタッフから大きな花束を受け取る・・ 

そうか、ここでの仕事はこれで最後なんだわ・・・

職場の仲間が開いてくれた私の送別会にはユ先輩も駆けつけてくれた。

私は今までの事これからの事をほかのスタッフと談笑する。
急の配置転換で「憩いの夕べ」のDJに抜擢された事、遅刻したりお休みしたり、ほかのスタッフにご迷惑や心配をお掛けした事。
だんだん私らしさが出る放送が出来るようになってきていた事。
みんなが面白おかしく話しかけてくださる。
とても温かく包んでくれる職場だった事を、いまさらながら実感していた。

でも、あれから・・キムプロデューサーとはうまく話せない日が続いている。
今日も離れた所の席に座っていた。

ユ先輩がキムプロデューサーに問いかけるのが聞こえてきた。
「なあ、サンヒョク。ここで発表してもいいか?」
「ん、まあ、今じゃなくても・・」
「なに言っているんだ? 隠す事でもないだろ?」
「そうですね。」
「おーい。みんな聞いてくれ。ここで発表があります」
みんながユ先輩の方へ向き直り、注目する。
「じゃ、じゃーん。我らが愛すべきキムプロデューサーは、近々、チーフプロデューサーに昇格することが決まりました!みんな、拍手、拍手! サンヒョク、一言どうぞ!」
キムプロデューサーが少し恥ずかしそうに立ち上がった。
「チーフプロデューサーといっても、今までと仕事が大きく変わるわけではないので、今後ともよろしく。みんなで、いい番組を作っていきましょう」
拍手が起きた後、またみんなでわいわいと話が始まった。

ユ先輩がサンヒョクに今度は小声で問いかける。
「サンヒョク、ウンヒちゃんとケンカでもしているのか?」
「そういうわけでは・・」
「ウンヒ、いつも妙にお前に懐いているのに、今日は、お前、避けられているぞ?気付いているのか?」
「・・・」
サンヒョクはウンヒのほうを見るが、ウンヒはほかのスタッフと楽しそうに話をしていた。
視線も合う事はない・・・

送別会もそろそろお開き、私が『これで・・』と席を立つとユ先輩がおどけた調子で声を掛けてきた。
「ウンヒ、もう帰るのか?お前が今日の主役なんだぞ?よし、帰りたいんなら、王子様のお見送りをプレゼントだ!サンヒョク! お前、送っていけよ」
みんなに見送られ、私とキムプロデューサーでお店を後にした。


これで、最後かもしれないんだもの・・何か言わなくっちゃ。
「キムプロデューサー。チーフプロデューサーに昇格、おめでとうございます」
「ウンヒも新しい仕事、頑張れ。 ウンヒなら、頑張れると思うよ」

・・話が続かない・・
いろんな事を考えているうちに、なぜか、涙が出てきてしまった。 
 ・・ヘンなの・・・・

「ウンヒ?どうしたの?泣いてるの?」
「泣いてなんかいません!」
キムプロデューサーが私の顔を覗き込む。
「涙・・出てるぞ」
「出てません!」
私は顔を見られたくなくて下を向く。
「こんな所で泣くなよ・・僕が泣かしているみたいじゃないか・・」
キムプロデューサーはハンカチを取り出し、私に渡そうとする。
でも、私は受け取れなかった。

「・・・キムプロデューサーは私が出向になって、セイセイしているんですか?・・・全然寂しくないですか?」
言っている間にも涙が零れてきて、完全な涙声・・だ。 私。
「寂しい?寂しいよ、本当だ」
「嘘です。『泣く子には勝てない』って顔に書いてあります!」
「おいおい、僕の顔のどこに書いてあるんだ?」

・・やだ、私、これじゃあ絡んでいるみたいじゃない。
・・・私、飲み過ぎちゃったのかしら・・今までこんな事なかったのに・・・
・・・最後かもしれないんだから、笑顔にならなくっちゃ・・
もうこうやって一緒に歩く機会もなくなると思うと、キムプロデューサーの声を聴いているだけで、また涙が滲んできてしまう。

下を向いていた視界が涙でぼんやりと霞む。
視界の片隅にキムプロデューサーの足が映る。そして、その足は地面に片膝を付いた。
視界にキムプロデューサーの顔が現われる・・
キムプロデューサーが下から私の様子を伺っている?
・・・そんなに見ないでください・・
私の頬にキムプロデューサーが手を当てた。温かい大きな手だった。
キムプロデューサーの顔がどんどん近付いてくる。
そして、口唇が重なった・・・

なのに、私はキムプロデューサーの肩を押し返してしまった。
「ゴメン・・」
キムプロデューサーは小さい声でつぶやいた。
「あ、あの、そうじゃないんです。イヤだったんじゃないんです・・その・・息苦しくて・・・・」
私は慌てて否定する。
キムプロデューサーがふっと笑い出した。
「息止めていたの?」
「だって、急に・・」
「僕も器用な方じゃないけれど、ウンヒも相当?」
「・・・・」
「じゃ、もう一回」
私は目を閉じる。
キムプロデューサーの口唇が私の鼻の頭に触れた。
えっ、なんで?
驚いて目を開けると、キムプロデューサーは笑っていた。
私が呆然としているうちに、キムプロデューサーは立ち上がり膝についた土を払う。

「ウンヒ、あの、キスしてからでなんだけど、僕とちゃんと交際しない?」

キムプロデューサーが顔を赤くして、照れている!

私はうれしくて、ホッとして、ちょっといじわるな気持ちも出てきた。
「えっ!今までお付き合いしていたんじゃなかったんですか?」
「・・・確認だよ。カクニン!」


****

はぁ〜。やっとここまで着ました。

<19>をUP時にyoshinoさまに掛けられた言葉... 「そろそろいいですよね」
どう『甘いシーン』を書くかで悩みました。サンヒョク&ウンヒの精一杯です!あはは。
と言うことで次回が最終回になります。




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