<18> 誕生祝い

私ウンヒとキムプロデューサーは、ジュンサンさんとユジンさんとユソン君のお家を訪ねた。
ユジンさんはまだ大変な時期なのにいやな顔ひとつせず、私達を迎え入れてくれた。
お祝いの品はさらりと渡し、私は一目散にベビーベッドのそばへ駆け寄る。

ユソン君はベビーベッドの中で目をパッチリ開けている。
かっ、かわいい〜! ホカホカしている感じ? わぁ〜 抱っこした〜い!

「ユジンさん!抱っこしてもいいですか?」
「おい、ウンヒ落とすなよ」
「落としませんよ! そういう事言うとサンヒョクさんには抱っこさせませんからね!」
私とキムプロデューサーは代わる代わるユソン君を抱かせていただく。
ユジンさんは心配そうに手を差し伸べつつ、
「あら、サンヒョクもウンヒさんも、赤ちゃんの扱いに慣れているのね」
「まぁね。ウンヒはお姉さんの所に姪っ子がいるんだって。だから『おばさん』って呼ばれても腹が立たないらしいよ」
「サンヒョクさん!サンヒョクさんなんて、これで正真正銘のおじさんなんですからね!」
「正真正銘のおじさんってなんだよ?」
「説明しましょうか!」
軽く睨み合う私とキムプロデューサーを、なだめるかのようにジュンサンさんが口を開く。
「まあまあ。そのくらいにして・・ところで、なんでサンヒョクが赤ちゃんの扱いに慣れているんだよ?」
「僕は、ヨンゴクの所にジヒョンちゃんが生まれた時、娘自慢によく呼ばれたわけ。で、ヨンゴクと僕はジンスクにみっちりご指導を受けたんだ。そうか、あの時はジュンサンもユジンもソウルにいなかったもんな」
「そうか・・そうだな」

ユジンさんがキッチンの方へ向かおうとした。
私は、なるべく自然に、ユジンさんのあとを追う。

サンヒョクはキッチンへ向かう二人をぼんやりと見ていた。
しばらくの間、二人はリビングに姿を見せなかった。

ジュンサンは、腕の中で眠るユソンの顔を、頬を、肩を、手を、足を、そっと撫でるように触れていた。
「ジュンサンも相当抱っこしているんだろ? 新米父さんにしてはうまいんじゃない?ユソン、お父さんに抱かれて安心したのかな? 眠ったみたいだ」
「・・。やっぱり、目が見えたらって思ってしまうよ。ユソンの顔、・・見たいよ・・
 それに、どうしてもユジンにしわ寄せがいってしまう・・」
「そんなこと言うなよ。電話じゃ、ジュンサンの方が泣き声を聞き分けるのがうまいって言っていたよ。それに、ユジン、ますます綺麗になっているよ。とっても幸せそうだ」
「・・・そうみえる?」
「相当ユソンに振り回されているな。ジュンサンは仕事ちゃんとしているのか?」
「ヨンゴクじゃあるまいし・・これでもお父さんだからね、今まで以上に頑張っているよ」
「そうか。ユジンも働きたくてうずうずしているんだろうな・・」
「とりあえず産休中だけれど、その後どうするのかは・・」
「なんだ。ジュンサンはユジンに専業主婦になってほしいの?」
「仕事をしているユジンも好きだけれど、僕は小さい頃から母さんと一緒にいることが少なくってね。やっぱり寂しかったんだよ・・」
「まあ、よく話し合って。ユジンもそういう寂しさは、十分、分かっているさ」
「・・もう少し落ち着いたら話してみるよ」
「そういえば、うちの父さんには生まれた事、話したぞ」
「ああ。こちらからも大学の方へ電話を入れさしてもらったよ。・・キム教授も・・お元気そうで何よりだ。」
「そうか。落ち着いたらユソンもつれてうちの実家に遊びに来いよ」
「ああ・・でも、行く事で迷惑をかけたくないんだ。・・これはむずかしいな」
「・・そうでもないさ。そのうち、なんとかなるよ」

その時、視野の片隅にユジンがリビングを通り抜け他の部屋に向かう姿が目に入った。
( ん? ユジン涙ぐんでいる? ウンヒ、あいつ何をやらかしたんだ?)

しばらくすると、封筒みたいなものを片手にしたユジンがまたキッチンへ戻っていった。
ジュンサンがユジンに声を掛ける。
「ユジン、どうしたの?ウンヒさんと話すならこっちに座ったら?」
「・・ええ」
ユジンのかすれた声にジュンサンの表情が途端に変化する。
すぐにウンヒとユジンは何事もなかったかのようにリビングに現われ、僕達の会話に入ってきた。


キムプロデューサーが私に視線を送る。そして小声で
「おい、ウンヒ。なにしてたんだ?」
「勘の働かないサンヒョクさんには秘密です!」
「勘の働かない?」
「あとで、説明します」


*    *    *


ジュンサンさん宅からの帰り道。キムプロデューサーは運転席に座るとさっそく私に聞いてきた。
「さっきのはなんだよ」
「えっ? さっきのって何ですか?」
「とぼけて・・ユジンに何か言ったのか?ユジン、涙ぐんでいたじゃないか。」
「心配ですか?」
私が顔を覗き込むと、キムプロデューサーはため息をついた。
「あとで、説明するんじゃなかったのか?鈍い僕に」
「自覚はしているんですね?」
私は挑戦的に言った。
「・・行く前から奥歯に物が挟まっている言い方をしているのには、気が付いているよ」
「タイムリミットを過ぎましたので、私とユジンさんの秘密にすることにしました(笑)」
「コラ。からかうな。ちゃんと説明しろ」
「サンヒョクさんの“たってのお願い”なら答えてあげないでもないです」
「ウンヒさん。意地悪を言わないで、教えて下さい(笑)」
「よろしい、お答えしましょう。(笑) で、どこら辺まで、気付いているんですか?」
「どこら辺? ウンヒが何か言って、ユジンが封筒を渡した。って所かな?」
「あっ。それは見ていたんですね。んー。すごいおまけです。ヒントは“お祝いの品”です」
「お祝いの品・・たくさんあったよね?」
「そうです。私から贈るのには『不自然なくらいの』たくさんの品です」
「!」
キムプロデューサーが私の顔をまじまじと見詰めた。
「なるほどね」
「わかったんですか?」
「大体、見当が付いてきた。でも、なんで?」
「なんでと聞かれても・・そうなったんです。わかったんですよね?さすがです!!」

キムプロデューサーが車を発進させた。
「それじゃあ、一緒に行くか?」
「行くってどこへですか?」
「・・勘の鋭いウンヒは、気付いたろう?」

えっ、あっ、うそぉ・・
それは・・それは・・ちょっとどころか、すご〜くまずいわ。

・・だって、あの事はお父様とサンヒョクさんには内緒なんだもの!
自然に分かってもらえればそれで・・とぼけちゃおっと。
「ビターチョコパフェ、食べに行くんですよね!」
「はずれ! あっ、でも、元気の素もいるのかな?」
「えっと」
「まあ、大丈夫だよ。任しておいて。元気足りなくなったらチョコパフェも考えるから・・」


まずい・・任せておけない・・
このまま行ったら、おばさまに怒られちゃうの? 怒られちゃうじゃない! 




*********

サンヒョクとジュンサン こんな風に語り合って欲しいな〜と。
次回はついに。^^v





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