<17> ユソン誕生

朝からキムプロデューサーの様子がとってもおかしい・・
いつもは仕事に怖いくらい集中力を発揮し、皆にテキパキと指示を与えているのに、
今日は心ここにあらずって感じ。どうしたんだろう・・・

「キムプロデューサー? どうかなさったんですか?」
「えっ、・・どうもしないけれど」
キムプロデューサーは意外なことを言われたかのように振り返る。
「それは嘘ですね。なんだかヘンですよ」
「そう・・そうかな?」
「はい。」
私ウンヒはキムプロデューサーの顔を覗き込んだ。
「昨日の夜、・・その・・ユジン・・陣痛が始まったみたいで・・病院まで送っていったんだ・・」
「あぁ! それで、そわそわ?」
「そわそわしている?」
「えぇ!(笑)」
私が笑顔で答えると、キムプロデューサーもやっと笑ってくれる。
「なんか、落ち着かなくって・・甥っ子か、姪っ子か、どっちかな?とか・・ 大丈夫かな?とか・・」
「大丈夫ですよ。ジュンサンさん付いているんでしょ?」
「そうなんだけど・・生まれたら電話してくれるはずなんだ・・」
「お兄さん宅の子供でこれじゃ・・自分の子供の時は思い遣られますね」
「なんだよ。他人事だと思って」
「(笑) 私は自分のお姉ちゃん家に子供いるから、そういうのは体験済みなんです!“そわそわ”わかりますよ。(笑)」

さて例の件。キムプロデューサーに気付いてもらわなくては。
「あの、生まれたら、私にも教えてもらえませんか?」
「いいけど・・」
なにげなく、さりげなく、でもはっきりと気付いてもらわなくっちゃ!

「私、お祝い用意してあるんです」
「えっ、もう?」
「ええ。もうです」
ホラ! どんどん不思議に思って質問してきて! 
お母様の深くて複雑なお心、息子なら気が付かなくっちゃです。

「・・・。ウンヒも女の子なんだね。そういうところ気が付くんだ」
・・ちっ、ちがうんです。発想の仕方が・・方向違いです!
「生まれたら、すぐに病院へ行くんですか?」
「ああ、たぶん。ジュンサン一人じゃ何かと困るだろ?」
「そうか・・私は退院されて落ち着いた頃にお祝い持っていった方がいいですよね?」
「・・そうだね。また、その時は連絡するよ」
「その時は一緒に行ってもらえますか?」
「そうだね。一緒に行くか」
「約束ですからね!」
「ウンヒって、子供好きなの?」
「それはそうですけれど・・」

あーん。ダメだ・・
キムプロデューサーったら、全然、私とお母様のことに気が付かない・・
どうすれば・・うーん。
そうか! あの大量なお祝いの品の数々を見れば、きっと気が付くに違いないわ!
じゃ、当日までは、このままでいいか・・


ところで、ユジンさん、あんなに細い身体でお産なんだ。
心配する気持ちも分かる気がする・・聞いてしまうとこっちまでドキドキしてきたわぁ。
無事、赤ちゃんが生まれますように。

         * * * * *

辺りが暗闇に包まれサンヒョクの仕事も一区切りが付いた頃、やっと、携帯電話の音が鳴り響いた。

5月12日 ユジンが男の子を出産した。母子とも健康、問題なし。


サンヒョクは落ち着かなかった気持ちが、すっと楽になっていくのを感じた。
ジュンサンに病院まで迎えに行くことを伝え車に乗り込んだ。

病院の廊下に小走りする足音が響く。
途中、医療スタッフとぶつかりそうになりながらも、廊下の角を曲がる。
廊下のベンチに、ジュンサンとユジンの妹ヒジンが並んで座っていた。
ヒジンが椅子から立ち上がる。
「サンヒョクお兄ちゃん! 来てくれたんだ」
「ヒジンはいつから来ているの?」
「お昼過ぎ・・お母さんは今こっちに向かっている途中なの」
「そうか」
サンヒョクがジュンサンに視線を落とすと、ジュンサンの表情は疲れてはいるが、ホッとしているようなそうでいて清々しい笑みを浮かべていた。
「ジュンサン。おめでとう。」
「サンヒョク。早かったね? 仕事は抜けても大丈夫?」
「なに水臭い事言っているんだ?1日中落ち着かなかったんだぞ。で、お父さんになった感想は?」
「ん.なんだかまだ実感わかなくて。なんて言ったらいいのかな」
「そう、そんなものなのかな。 男の子だって言っていたけれど」
「面会時間外だから、会えるのかな?どうなのかな?」
「ヒジンはもう会ったの?」
「うん。ユソンはね。ジュンサンお兄ちゃんとお姉ちゃん、どっちとも似にてる気がするの。この子がお姉ちゃんのお腹に入っていたんだと思うとすごく不思議な気がしたの・・」
「えっ、もう名前が決まっているの?」
「ああ。男の子だったらユソン。カンユソンって決めていたんだ」
「カンユソン。いい名前だ。ジュンサンが名付けたのか? ところで、ユジンは?」
「今は眠っていると思うけれど。会ってから行くかい?」
「今日は遠慮しておくよ。ジュンサン。お前、昨日から眠ってないんだろ?家に帰るなら送っていくよ。ヒジンはどうするの?」
「今日はお母さんとジュンサンお兄ちゃんの家に泊めてもらうの」
「じゃあ。心配要らないな。お母さんはここへ直接来るの?」
「駅に着いたら、私の携帯電話に連絡してくれることになっているわ」
「じゃあ、電話が入ったら、僕が迎えに出るよ。さあ。後は病院に任せて、帰って僕たちは祝杯だ!」

           * * * * *

ユジンさんの落ち着くのを待って、私とキムプロデューサーはお祝いを持って行くことになった。
キムプロデューサーに無理を行って、私のアパートまで迎えに来て頂いた。
だって、たくさんのお祝いの品、お渡しする前にどうしても見てもらわなくっちゃ!
とりあえず、私の部屋に上がっていただく。
目の前にうず高く積まれたお祝いの数々。ほら、お母様のこだわり伝わるでしょ?

肌触りがいい白のシンプルなベビー服、お散歩の時に使える帽子、
温度調節に万能なベスト、サンヒョクさんも使ったという知育玩具。
ユジンさんのための簡単に扱える食品。母乳のための大量のわかめ。

購入する時、おばさまが独り言のように言っていたこだわりを繰り返しながら、
一つ一つ『こんなのを用意しました。』とキムプロデューサーにお見せする。
「さすがだね。よく気が付くじゃないか!お姉さんと選んだの?」

あのですね! 鈍すぎます! キムプロデューサー!
お仕事の時はあんなに冴えているじゃないですか!
私とチヨンおばさまの接点なんて、思いもしないのかしら・・
・・・それもそうかもしれないけれど・・
ホラ、私の顔をちゃんと見てください! 伝えなきゃいけない事があるんです!
キムプロデューサー! お願いします。気付いて下さい ・・・。

このまま、このお祝いの品の数々を、私からって渡すわけにはいかないわ!




*****
この回を書いている時、yoshinoさまに「ユソン君の誕生日はいつでしょう?」と尋ねた私。
ズバッと答えが返ってきたときには少々驚きました^^
そうなんです、ここでもひっそり「To the future」の世界とうっすらリンク?
しかも、yoshinoさまのお話は誕生日に触れる前に、先にUPしてしまうと言う掟破りm(__)m
今頃ですが、とんでもなく、申し訳ありませんでした〜。

ついにユソン君誕生。カン一家の幸せがキム一家にも幸せを運んでくれる事を願って。




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