<15> サンヒョク、倒れる

まだまだ寒い日。
キムプロデューサーがもう3日も仕事を休んでいる。いったいどうしたんだろう・・

ADのミンウが私に話しかけてきた。
「キムプロデューサーが3日も休むなんて珍しいよな。今年はヨンフルエンザが大流行だから罹ちゃったのかな?キムプロデューサーって一人暮らしだろ?先輩方に見舞いに入って来いって言われちゃってさ。ウンヒさん、行って来て下さいよ。キムプロデューサーの家、知っているでしょ?」
「知っているけど・・」
「じゃ、お願い。僕が行くより、ウンヒさんが行く方がキムプロデューサーも喜ぶよ。花でも持って行って来てくださいよ」
「ええ・・」


私は、お花を抱えてキムプロデューサー宅へ向かった。
ドアチャイムを鳴らしたが、反応がない。
留守なのかな?
しばらくすると、インターホンから力のないキムプロデューサーの声が聞こえてきた。
「は・・い。」
「ウンヒです。お見舞いに来ました」
「あ・・ありがとう・・(ゴホ ゴホ)」
ドアノブを回すと玄関が開いていた。
「勝手に上がりますよー」
部屋のカーテンも閉めたままの薄暗い中で、キムプロデューサーはパジャマのままソファに座り込んでいた。
「うつるから・・帰りなさい・・」
「私、健康が取り柄なんで、気にしないで下さい」
「明日、本番あるだろ? いいから帰りなさい・・」
「熱あるんですか? 病院は行っています?」
「・・・」
「これ、番組の仲間からお見舞いの花束です。こんなこともあると思ってマスク持参できましたから。キスでもしない限りうつりませんよ(笑)」
「・・キスしたくなったら、どうするんだ?」
私、思わず2〜3歩さがる。
「・・冗談だよ」
「もうっ! 冗談言う元気があれば大丈夫ですね?帰ります!」
「気をつけて帰って・・帰ったら、うがいね・・」
もう、病気の時まで細かいんだから。
私はいったん玄関に向かうが、キムプロデューサーが心配になってきびすを返した。
まだキムプロデューサーはボーっと座り込んでいて、私の気配に気付くとゆっくり振り返った。
「なに? 忘れ物?」
「あーもう! サンヒョクさん! ベッドに戻ってください!体温計ありますか?ちょっと測ってみて」
キムプロデューサーの腕を取ってベッドへと引っ張る。
パジャマ越しだけれど、熱感が私の手に伝わってきた。
高熱じゃない!!
「寒気しますか?」
「・・今は・・あつい・・」
「じゃ、とりあえず・・着替えて、それから冷やしましょう。何か食べられそうですか?食べたいものありますか?私、けっこう料理好きなんです。味は保障できませんけれど」
「なんにもいらない・・キッチンに薬置いてあるから、持って来てくれる?」
「はい。キッチンですね。何か食べてからの方が..」
「何にも・・食べたくないんだ...」
キムプロデューサーは話すのさえ辛そうだった。
私は薬とお水を持ってきた後、どうしようか考えていると
「少し眠るから・・ウンヒは帰って・・」
キムプロデューサーは目をつむりながら言った。

そう、言われても・・ ここでおいて帰るわけにも・・

おでこに乗せた冷タオルを時々交換しながら、キムプロデューサーの顔を見詰めた。
この様子じゃ、3日間、ロクに食べてないみたい・・
そうするうちに、キムプロデューサーが寝息を立て始めた。

私は、いろいろ考えて、実行に移すことにした。
局に問い合わせて、キムプロデューサーの実家に電話をした。
「もしもし、おばさま?私ウンヒです」
「あら、ウンヒさんから電話なんて・・」
「サンヒョクさん、高熱出して、今、寝込んでいるんです!」
「えっ。あなた、今どこから電話をしているの?病院?」
「いいえ、サンヒョクさんのご自宅です」
「よく分かるように説明して頂戴」
「お仕事3日間休まれていて、職場を代表してお見舞いに来たんですけど、熱もまだ高いし、なんにも食べてないみたいで・・病院のお薬があったから、お医者さんにはかかっていると思うんですが・・」
「今から行きます。連絡してもらってよかったわ」
「よかったぁ! おばさまが来てくだされば安心です。このままじゃサンヒョクさん、干乾びちゃうところでした」
おばさまは、その後、何か考えているかのような沈黙があった。
 (もう、世話の焼ける子なんだから・・)

「ウンヒさん。あなた若い女性なんだから、お料理くらい出来るわよね」
「えっ? あの・・あまり自信は・・」
「今、レシピを教えるから、メモを取りなさい」
「あの・・、」
「仕方ないわね、やっぱりそんなに急には行けないわ」
「あの、教えていただけるんですか?」
「明日には行くようにしますから」
「・・おばさま!私、頑張ります!」

本人が寝ているのでどうしようかと思いつつ、キッチンにあるものを確認し足りないものをいったん買出しに出た。
そして、私はおばさまに教えていただいた黒ゴマのお粥とせりのナムルをこしらえた。
冷蔵庫の中に林檎を剥いて入れ、明日の朝用にスープを準備した。
私って、やれば出来るじゃない!
キムプロデューサーが、なんか口に入れてくれるといいんだけど・・

キムプロデューサーはまだ眠っていたので、ローテーブルの上にメモを置いて私は帰ることにした。

サンヒョクは、深夜になってやっと目覚めた。
 (こんな時間かぁ・・ウンヒ、ちゃんと帰ったのかな?)
視線をテーブルに向けた時、ご飯が用意してあるのに気が付いた。
ウンヒの書いたメモを手に取ると、ゆっくり、何度も目を通した。
 (こんなこと・・してくれたんだ・・)
お鍋を触ってみるとまだほんのりと温かかった。
食欲が沸いてきた訳ではなかったが、食べてみることにした。一口に入れる・・
 ( ん?)


早朝、サンヒョクは玄関チャイムの音で目覚めた。
「・・母さん、どうしたの?」
「どうしたのって・・ 身体はどうなの?」
母チヨンは、ドアが開くと話しながら部屋の中へ入っていった。
「えっ? なんで知っているの?」
「ウンヒさんよ。昨日、ウンヒさんから電話を頂いたのよ」
「ウンヒが?」
「ご飯、作ってくれたでしょ?」
「ああ!母さんが僕の好きなもの教えたのか..」
「ウンヒさん、料理の腕前は?」
「(笑)ウンヒ、健闘しているよ。食べた時母さんの顔が浮かんだし..」
「そう・・」
「僕、病院へ行ってから、今日は出勤するよ」
「もう、大丈夫なの?」
「母さんの顔を見たら、元気が出てきたよ。来てくれてありがとう」
ウンヒが準備をした朝ごはんを、チヨンに温め直してもらって食べた。

サンヒョクが家を出ると、チヨンは残っていたウンヒの料理を味見してみた。
そして、ふっと笑みを浮かべながら思った。
  (ウンヒさん。教えがいがありそうね..) 




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そして..サンヒョクの病名は..気付いてもらえましたか?(ちょっと遊んでみました^^)
ここでも、ウンヒとチヨンさんに接点を持ってもらいました。




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