<14> 初対面

正月休みも明け、再び忙しい日々が戻ってきた。
『夕べの憩い』の中で、今度、私ウンヒの発案で映画音楽の特集を組むことになった。
過去の名作と呼ばれるものから最新の映画まで、何回かに分け放送をすることになっていた。

それでと言う訳でもなかったが、私はキムプロデューサーと今度のお休みの日に、一緒に映画を見に行くことになった。
コレって? ちゃんとしたデートみたいよね?


映画館の前で待ち合わせをしたのだが、なかなかキムプロデューサーは現われなかった。


時間には厳しい人なのに、へんよね? 

約束、忘れちゃったのかしら・・
昨日、遅くまで会議があるって言っていたから、寝坊かしら?
ここから、キムプロデューサーのマンションは近い。
そうだ! 起こしに行って驚かしてやろっと!


その頃、サンヒョクは昨夜の深夜まで続いた会議の内容をまとめたり資料を見直したりで疲れがたまり、今日は休日と言うこともありついつい寝過ごしてしまっていた。
ふと、スケジュール帳を見て、
(しまった! 今日、ウンヒと約束していたんだ! 今からなら、ぎりぎり間に合う?)
バタバタと準備をしていると、玄関チャイムが鳴った。
(えっ、ウンヒ、ここまで来ちゃったの?)
サンヒョクが慌ててドアを開けると、ドアの前に立っていたのは・・
例のお見合い写真の束を抱えた母チヨンだった。
「母さん? どうしたの?」
「サンヒョク、今、起きたところね?この前はうまく逃げられちゃったから、今日は押しかけてきたのよ!今日は休みなんでしょ?ちゃんとこれを見てもらわないと・・先方だってお待たせしているのよ」
チヨンはサンヒョクにお見合い写真を突きつけるように見せながら、部屋の中へ入っていった。
「母さん。折角来てもらったんだけど、僕、これから出掛けるところなんだ。約束があって・・」
「どんなお約束なの?また、そんなことを言って逃げ出すんでしょ。お母さんの目は誤魔化せませんよ。そうはいきません」
「・・そうじゃないんだけれど」
母チヨンの性格を考えると簡単に帰ってもらえそうもなかった。
サンヒョクは、ウンヒの携帯電話に連絡を入れようと自分の携帯電話を手にする。
「サンヒョク、まずはここに座りなさい」
母チヨンの声を背中に感じながら、サンヒョクはどうしようかと考えていた。

その時、再び玄関チャイムの音が鳴った。
「あっ、僕が出るから、母さんは座っていて」
言うまもなく、チヨンはインターホンをとっていた。
インターホンからウンヒののほほんとした声が響いた。

『サンヒョクさん!朝ですよ〜』


サンヒョクは顔に手を当て、思った。
(どうなるんだよ・・どうするんだよ・・この状況・・)


「あの、どちら様?」
「えっ?」
私はインターホンから聞こえてきた女の人の声にびっくりし表札を見直した。
あれ? キムプロデューサーのお宅であっている・・
その時、玄関ドアが開いた。
「キムプロデューサー! やっぱり間違っていませんでしたよね」
「ウンヒ、おはよう。あの、今日なんだけど・・」
「あっ、おはようございます。時間になってもみえないから迎えに来ちゃいました!」
「ウンヒ、悪いんだけど・・」
キムプロデューサーの話す後ろから女の人が顔を出した。
「サンヒョク、どちら様?」
「ああ、僕のやっている番組のDJのチェウンヒさん。ホラ、母さんはよく聴いてくれているだろ?」
「ウンヒ、こっちは僕の母さん」
「こんにちは。キムプロデューサーのお母様がいらしていたんですか。あの、はじめましてチェウンヒです。キムプロデューサーにはいつもお世話になっております」
「まあ、そうでしたの。サンヒョク、約束って、この方との約束なの?」
「ウンヒ、そういう訳だから、映画は今度でいいかな?」
「はい。わかりました。それでは」
「ちょっと待って、ウンヒさん。折角来ていただいたんだから、あがっていただいたら?」
「ええ、でも・・」
私が躊躇していると、キムプロデューサーのお母様に腕を引っ張られ部屋の中へと導かれてしまった。
どうしよう・・
キムプロデューサーの顔を見上げると、キムプロデューサーも困った顔をしていた。
キムプロデューサーのお母様がお茶を入れてくれる・・
私は、予想外の出来事に声がきちんと出ているのかもわからなかった。

キムプロデューサーのお母様が痛いくらいの視線を私に送っている・・
「今日はふたりで映画を見に行くお約束だったのかしら?」
私が答える前にキムプロデューサーが口を開いた。
「今度、番組で映画音楽の特集を組むんだ。それで・・」
「お休みの日まで、お仕事なの?」
「半分仕事だよ」
私もキムプロデューサーの言葉に続いた。
「そうです、半分お仕事なんです」
「そう・・」
チヨンは心の中でつぶやいた。
(残りの半分がなんなのか、聞きたいわね・・)


あれ? 机の上にあるのってお見合い写真かしら・・
ということは、キムプロデューサー、お見合いをするのかしら・・


そんな時、キムプロデューサーの携帯電話が鳴り、なんだか難しい顔で話している姿が目に入った。
キムプロデューサーは電話を切ると、
「母さん、ウンヒ、僕、仕事に行かなくちゃいけなくなった。トラブルがあって・・」
「なんかありましたか?」
「ウンヒとは関係ないよ、他の企画で、今、揉めていてね・・局へ行ってなんとかしなくちゃ・・そういうことだから、ウンヒ、この埋め合わせはするから、今日はゴメン。母さんも、折角来てくれたけど、また、電話するから」
キムプロデューサーは机の上の資料をまとめ出掛ける準備にはいった。

私も帰ろうかと立ち上がると、キムプロデューサーのお母様が言った。
「折角、お茶も入れたんだし、ウンヒさんは飲んでいって頂戴。サンヒョク、お仕事ご苦労様ね。今日はお父様にここへ来るとは言ってないの。あなたが帰るまではきっと待てないから、また出直すことにするわ。いってらっしゃい」
「母さん!ウンヒだって、迷惑だよ」
「アラ、そんなことないわよ、私たち、ここに来たばっかりなのよ。少しくらい休んでから帰るから心配は要らないわよ。 ねえ、ウンヒさん」
「えっ、まあ。そうですね・・」
困惑している顔の私に、キムプロデューサーはすれ違いざまに小さな声で言った。
「・・じゃあ、頑張れよ。」
「・・いってらっしゃい。」
キムプロデューサー! 頑張れよって・・いったい、なにをどう頑張るのよぉ。


キムプロデューサーのお母様と二人きりになってしまった。
下ばかり向いているのも、失礼よね・・
私が顔を上げると、キムプロデューサーのお母様は、にっこり微笑んだ。
「あの、お母様?」
「あなたにお母様と言われるのはヘンね?」
「そうですね。ではおばさま。何か私にお話があるのでしょうか?」
「ウンヒさん。単刀直入にお聞きしますね」
「・・はい」
「サンヒョクとは、どういうご関係?」
キムプロデューサーのお母様は私をまっすぐ見据えている。
その真剣なまなざしに真剣にお答えしなければ・・と思った。
「職場では、いつもご指導いただいています。とても尊敬できる方だと思っています」
「そう・・」
「尊敬・・というか・・好きです。こう言う事、おばさまに先に言うのもヘンですよね・・(笑)」
「サンヒョクとはそういう話はしないの?」
「ええ。キムプロデューサーは、私のことなんて見ていないと思います。私じゃ全然だめなんです。・・ユジンさん、とっても素敵な人だったんです」
「あなた、ユジンの事、知っているの?」
「はい。私、以前に、ユジンさんに文句言いに行っちゃったんです。・・その時、ジュンサンさんとユジンさんには優しくして頂いて・・」
「カン・ジュンサンも知っているの?」
「あっ」
あっ、そう言えば、キムプロデューサーはジュンサンさんとは異母兄弟って・・
気を悪くなさったのかしら・・
キムプロデューサーのお母様はふうっと深いため息をついた。

そのあと、キムプロデューサーのお母様は私に、キムプロデューサーのお仕事についてか仕事ぶりとかをお尋ねになった。

なんだ。キムプロデューサーはお母様に心配されているんじゃない。
私には、親に心配掛けないようにしろっなんて言っていたのに。


チヨンは思った。
(サンヒョクが、あの子がなんとも思っていない女性と映画に行く約束なんてするのかしら?)




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ウンヒとチヨンさん こんな風に出会ってもらいました。
チヨンさんの母の勘、侮れません^^




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