<10> 元気の素

夏も終わりにさしかかった頃、私とキムプロデューサーは歴史ある市民楽団のコンサートの取材に出掛けることになった。


開演時間のちょっと前に行ったつもりなのに、その気配はまだない・・
あれ?
私が持っていた二人分のコンサートチケットを慌てて取り出した。
キムプロデューサーが上からチケットを弾くように取り上げた。
「ウンヒ。間違えているぞ!」
「えっ?」
昨日、ちゃんと確認・・キムプロデューサーは口に手を当て笑い始めた。
「開演時間! 13時じゃなくて午後3時。しっかりしてくれよ〜」
「あっ、どうしよう・・すみません!一度、局に戻りますか?」
キムプロデューサーは時計を見ながら言った。
「帰ってもなぁ・・仕事にはならないぞ。ま、いいか・・3時まで自由行動ということで」
「すみません。今日忙しかったのに・・」
「僕もきちんと確認しなかったしね。気にするな。その代わり帰ってからが忙しくなるぞ」
「はい!」
「さてと、どうするかな?」
「・・あの、ほんとに自由行動なんですよね?私、行きたい所があるんですが・・」
「行きたい所?」
「私の元気の素があるんです!一緒に行きませんか?」

私はことあるごとに通っているアイスクリーム屋さんにキムプロデューサーをご案内した。
ついてきたキムプロデューサーは、ちょっと予想外の展開って顔をしていた。
「美味しいんですよ!元気でますから!」
「・・はあ。なるほどね」
「ここの『ビターチョコレートパフェ』絶品なんですよ」
「・・ウンヒらしいね。」
私はお勧めしたのに・・キムプロデューサーはアイスコーヒーなんて頼んでいる。
もう。ほんとに美味しいのに・・


わーい。お仕事の時間にこれが食べられるなんて、今日はしあわせっ!
アイスは甘くてその上のチョコは苦めの大人の味・・これを食べないなんてもったいないのに。
「サンヒョクさん。半分あげましょうか?」
「いいよ。ウンヒの元気の素なんだろ?(笑)」
「じゃ、一口だけでも食べてみません?」
私はパフェを一匙スプーンですくって、キムプロデューサーの口元に運んだ。
「いいよ」
口を開いた瞬間に、キムプロデューサーの口に放り込んだ。
キムプロデューサーは驚きながらも食べてくれた。
「ねっ?ちょっと大人の味で美味しいでしょ?」
「・・大人の味ねぇ・・ウンヒはこれで元気が出るの?」
「はい!落ち込んでいる事なんか吹っ飛んじゃいます」
キムプロデューサーの顔をよく見ると、ちょっと赤い?
「あっ、もしかしてチョコレートアレルギーとかありましたか?」
「そういうことじゃないんだけど・・」
「じゃ、よかったです」

私はしばらくの間、パフェを食べる事に専念していた。
これって、けっこうボリュウムあるんだよね。
「ウンヒ。お昼ごはんちゃんと食べたんだろ?よく入るね」
「これは別なんです!」


キムプロデューサーがふっと笑を浮かべた。
席を立ち私に近付いてきた。ポケットからハンカチを取り出し私の頬に当てた。
「大人の味もいいけど、大人が頬にチョコ付けてちゃダメだろ(笑)」
あっ、気をつけて食べていたつもりなのに・・しまった!
あわててキムプロデューサーのハンカチで口元を拭いた。
あっ、ハンカチにチョコレートが・・私って失敗続き・・
「これ、ちゃんと洗ってからお返しします」
「いいけど」
「あの・・もう付いていませんか?」
キムプロデューサーは私の顔をじっと見た。
「大丈夫だよ(笑)」




*****

<10>は短いんですが、記念すべき回でした。
『ビターチョコレートパフェ』は、「To the future」未来へ 7灯り から頂きました。
ユソン君とサンヒョクの語らいの場面と登場する『ビターチョコレートパフェ』
これを読んだ瞬間 これは頂きたい!! 
まったく異なる雰囲気のお話ですが、こんな風につながることを快諾して頂けて、とてもうれしかったことを覚えています。
こんな風にサンヒョクに味わってもらいました。^^v
yoshinoさま ありがとうございました




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