[受付・・・2文字の秘密] サロンの思い出
 

季節が1つ1つ動くたび、もう訪れることのない世界
思い出という名になって過ぎていきます。
幾度となく繰り返される季節
一生のうち何度この季節に逢うのでしょうか


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「綺麗だね、こんなにきれいな花嫁は見たことがないよ」
彼はウエディングドレスのチュールを触りながら囁いた。
彼の横顔を見つめ私はいつになっても隠しきれないときめきを感じていた。
「ありがとう、あなたの言葉で自信がついたわ」
「僕はいつだって本当のことだけ言ってるよ、知ってるだろ」
「・・ええ」



初めて彼に遇ったとき、心がときめかなかったといったら嘘になる。
初恋の人を見つめていたあの感覚、そう、私はひとめで彼の虜になった。
きっと私の目は星が飛び、ハートマークが映っていたんだろう。
あの時の心臓の鼓動は今思いだしても恥ずかしくなる、あのドキドキは彼の耳に届いたかのようだった。

彼のサロンでの小さな集まりに私が参加したのは偶然なことだった。
決して人生で交わることない世界、人達との出会い。
いつも穏やかで心から楽しめるそんな時間
それを人生の不思議といわず何が不思議なんだろうとまで思った。
彼らとは異次元の世界から来た私はいろんな話しにただ感嘆していた。
そんな私が萎縮しないように彼は妹のように心配りをしてくれた。
一度都合が付かず行けなかった翌日、彼は優しさの溢れる電話をくれた。
「どうしたんだい、君が来ないと驚いてくれる人がいなくって寂しいよ」



「温かな瞳に包まれている」
そんなふうに感じたのはいつからだろうか。
彼が話しながら軽く私の手を「そうだろ」と叩くとき、
私に彼が飲み物を渡してくれるとき、
どこからともなく僅かに棘のある視線を感じることあった。
でもそれ以上にどんな時にでも優しい視線を感じることがあった。


いつになっても場慣れしない私を彼は何故か気遣ってくれる。
そんな彼に感謝をしながらも私は秘かに誰かを探していた。
「ユニ、彼は今日はいないよ」
彼の言葉に私は髪の生え際まで真っ赤になるのがわかった。
「・・・・どうしてわかったの」
自分の声がこんなにもか細くなるのを私は初めて知った。
彼は私の手を取りベランダに出た。傍から見るとまるで恋人同士だ。
「ユニ、彼のことが好きなのかい」
彼の瞳に何か熱いものを見たような気がした、でもまばたきをしたときそれは消えた。
私はまるで10代の女の子のようにはにかみ、頷いた。
彼は私の肩を抱き私の頭を自分の肩にもたれさせると、そっと髪にくちづけをした。
「ユニ、セジョンも君のことが好きだよ・・・・君のことを嫌いな人なんていないさ」



ドアがノックされた。
「準備はいいのかい・・・・・・」言葉を飲み込むセジョンがいた。
私の横に立っていた彼が微笑みながら
「こんなにきれいな花嫁を一人にして置くなんて、僕がさらってしまうぞ」
「こんなにきれいだなんて・・・・」
「見る目がないね、でも彼女は僕より君を選んだんだよ」

「誤解よ」「わかってる」私たちは同時に声を上げた。

「冗談だよ、彼女はいつも君を見ていたんだよ。そして君は彼女を見ていた。
 それに気付かないなんて、唐変木だよ」

彼は何かをセジョンに囁き立ち去った。
セジョンは耳まで真っ赤になり、彼の立ち去った方を眺めていた。
「・・・ねえ、なんて言われたの・・・・」
「うん・・・・幸せにって・・・・・」
ーあなたって本当に嘘をつくのが下手ね、でも、そんなところが好きなんだけどー
私は心の中でそう呟くとセジョンの手に触れた。
セジョンが私を見つめ何か言おうとしたとき、ドアの外で大きな歓声が上がった。
私たちは顔を見合わせた。
「まさか・・・・」
私たちは思いだしていた、彼が悪戯っぽく
「君たちの結婚式には僕が受付をするんだ」と、ウインクしてたことを。


花嫁と花婿が自分たちの結婚式の受付を唖然として見つめた。
そこにはダークスーツに身を包んだ笑顔の彼が、お客一人ひとりに声を掛けていた。

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いかがでしたでしょうか。
想像の翼が大きく広がることを祈って。




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