11 <結 婚>


朝早くに目が覚めた。
ここは新しい我が家、マルシアンの横のマンション。
父さんが結婚お祝いとしてどうしてもと言うので、甘えさせて頂いた。
僕が住みやすいように、ユジンを筆頭にポラリス社長のジョンアさんやスンリョンが、ここ数日内装の作業をしてくれ、ようやく完成したばかりだった。

一晩中一緒に飲み歩いたヨンゴクとサンヒョクは、まだ眠っているようだった。
僕は窓を開けた。
深呼吸をすると胸に新鮮な空気か満ちてくるのを感じる。

「あっ、結婚するその日に、新郎がこんなに早起きしてどうするんだ?」
ヨンゴクが目覚めたようだった。僕はヨンゴクを茶化すように言った。
「先輩!起きたんですか?」
昨夜から、ヨンゴクは、『結婚の先輩』だから何でも聞いてくれとふざけて言っていたのだ。

ユジンはもう起きたんだろうか?僕がそんなことを思っていると
「ユジンはもう起きているよ。んー、さすがに今日くらいは寝坊しないだろう?」
背後からサンヒョクの声が聞こえてきた。
「サンヒョク。今、読心術使っただろう?」
「ハハハ。結婚式の日に朝起きて、一番先に思う人が新婦じゃなかったら、それは問題だ!今日は天気もいいし、思ったよりも寒くないね」.


ユジンは、冬の日、花嫁になった。

ユジンの支度を待つ間、僕は結婚式に参加してくださる人達と少し話をする時間を持つことができた。
僕の傍らに、サンヒョクが付かず離れずにいてくれて、僕の目の代わりをしてくれていた。

ユジンのお母さんとヒジンが入ってきた。
「ユジンを・・ユジンをお願いします・・」
「はい」
ユジンのお母さんは涙声だった。ヒジンが言った。
「お母さん。今からそんなに泣いていてどうするの?結婚式はこれからなのよ?ジュンサンお兄ちゃん、おめでとうございます。お母さんたらね。朝から、お姉ちゃんのアルバムを開いて泣きっぱなしなの・・」
「・・ユジンはお母さんに似たんだね」
「そう。親子そろって泣き虫なの。お母さんね、今日お父さんの写真を持って来ているの・・。さあ、お母さん。先に会場に入っていましょ」
ヒジンに促されて、二人は会場に入っていった。

キム次長とジョンアさんが入ってきた。
「理事!おめでとうございます。お二人が幸せになると思うと、涙が出てきそうですよ・・」
「ヤダヤダ。涙腺が緩くなるのは年を取った証拠ですよ」
「キム次長もジョンアさんも相変わらずですね。(笑)お二人より先に結婚する事になるとは思いませんでしたよ」
「いいんですよ。僕とジョンアさんは、今まさに、愛を育んでいる所ですから!」
その直後、ジョンアさんの『はあぁ』というため息が聞こえてきた。
「理事、ユジンとずっと一緒にいたいからって、マルシアンに引き抜こうとか思わないでくださいね。ユジンはポラリスの期待の星なんですから・・」
「わかっていますよ。ユジンを引き抜くなんて・・どうせなら、ポラリスごと吸収しますよ(笑)」
「理事!」
「理事が言うと冗談に聞こえませんよ・・ 僕のジョンアさんを困らせると承知しませんよ!」
「ハイハイ(笑)」

母カンミヒの声が聞こえてきた。
「母さん!来てくれたんだね」
「ちょっと前に空港に着いたの・・間に合ってよかったわ」
「大丈夫?」
「飛行機の中で眠ってきたから平気よ」
「父さんに会った?」
「えぇ。さっき外で・・。・・ところで、ジュンサン。・・キムジヌ氏はご招待しているの?」
「はい。サンヒョクに招待状は渡してもらったのですが・・」
「そう・・来てくださるといいわね・・」
「・・はい」
「私はユジンさんのお母様に御挨拶してくるわ」
「先に会場に入っていると言ってましたが・・」
「そう」
母も会場へ入っていった。

ヨンゴクとジンスクとジヒョンちゃんが入ってきた。
「ジュンサン・・ユジン・・すっごく綺麗だぞぉ・・」
「ユジンって、支度終わったの?」
「ジンスクがチェリンの助手をしていたからね。さっきチラッと覗かせてもらったんだ・・」
ヨンゴクが涙声だった。
「ヨンゴク?泣いているの?」
「ああ。花嫁姿を見るとなぁ・・うちのジヒョンも、いつかはお嫁に行くわけだろ?考えるとなぁ・・父親は切ないんもんだよ・・」
「はあ?」
「お前も娘を持つとわかるよ・・」
ジンスクがあきれた声で言った。
「ヨンゴク・・なにいってんの? ジヒョンがお嫁に行くのはまだまだ先よ。どうせなら、私の花嫁姿を思い出して泣いて欲しいわ」
僕は笑い出してしまった。
そこへチェリンが入ってきた。
「花嫁様のお支度が整いました。ユ」ジンは、そうね、今日はとっても綺麗よ。ユジンのイメージに合わせてデザインしたんだから、私の自信作よ!さあ、そろそろ始まるわよ。ヨンゴクもジンスクも、会場に行きましょ!」

僕はチェリンを呼び止めた。
「チェリン。どうもありがとう」
「・・どういたしまして。ジュンサン、幸せになってね・・」
チェリンの語尾が震えているような気がした。

サンヒョクが言った。
「僕も、そろそろ行くよ。・・あの、父さんと母さん、会場には来ているんだ・・その・・君のところへは挨拶に来れないみたいだけれど・・」
「ありがとう。サンヒョク・・」


僕の知り合いすべての人が祝福してくれる。
胸がいっぱいになる程、幸せな日だった。


結婚式が始まる前、花嫁控え室にユジンと二人きりとなった。
「ユジン、きれいだよ。・・君の姿見たかったなぁ」
「・・・」
「でも、心の目はちゃんと見えている。世界一きれいな花嫁さんだ!ユジン」
「・・ありがとう・・」

「ユジン。僕のお嫁さんになってくれてありがとう。神様、僕の見た中で一番きれいな人と結婚させてくれて、一番愛する人と結婚させてくれてありがとうございます。深く感謝いたします。」

僕は言い終わると、ユジンが泣いているような気がして強く抱きしめた。
ユジンは震えていた。
「ジュンサン。私も本当にありがとう。私が出会った人の中で一番素晴しい人と、私が一番に愛する人と結婚させてくれて、神様、ありがとうございます。本当にありがたくて・・」

ユジンは僕に言った。
「私、今日という日を忘れない。ジュンサンも忘れないで。」

僕たちは、しっかり手をつないで入場した。
注目を感じながら歩くのは、かなり長く感じた。

ユジンの手を、もう一度しっかり握った。今度は途中で逃さないように・・


結婚式が終わる頃、雪が降り始めた。
僕の、寂しさ、悲しさ、迷い、不安、そんなものを、その美しい白さで、かき消そうとしていた。


今日は、カン・ジュンサンとチョン、ユジンが本当に結婚した日となった。




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