ユジンが退院できる日が来た。
サンヒョクとヒジンが退院手続きをしている間、僕はユジンと病室で二人きりになった。
「ユジン。僕と結婚してどんな苦労があるのか、考えたことある?」
「なによ。どうしたの?」
「僕の目が見えないと言う事は、きっとユジンが考えもつかない苦労があると思うんだ。仕事だって、今はパートナーに恵まれているけれど、思い切り出来るわけじゃない。ユジンがイライラする事だって、負担だって多くなるんだ。 何をするのにも、ユジンに助けてもらったり、気を使わせてしまうと思うんだ。 それから――――」
ユジンの指が僕の唇に当たった。
「シーッ。ジュンサン。あなたがそばに居ない事より辛い事なんてないわ。ねっ、そうでしょ?」
「ユジン、ちゃんと考えて。実際の結婚生活は、思っているよりはるかに難しい事があるって事。」
「結婚する前から結婚後の心配ばかりするなんて・・ちょっと、ジュンサンらしいかな(笑)」
「茶化さないで聞いて。これは―――」
「ジュンサン、抱きしめてくれる? ねえ、ホラ早く!」
僕は戸惑いながらも言う通りにユジンを抱きしめる。
「・・うん・・私ね、辛い時や困った時、寂しい時に、いつもこうしてくれるだけでいいの。こうしてくれるだけで幸せなの。わかった?」
「・・ユジン・・」
ユジンのお母さんが病室へ入って来た。
ユジンのお母さんは僕を見るだけでも辛いはず。
僕が早く気付くことが出来たなら姿を隠すことも出来たのに・・
気まずい雰囲気の中、身の置き所のない僕にユジンは心を痛めているだろう・・
ユジンが僕を引っ張るようにして廊下に出た。
ユジンのお母さんの泣きながら呼び止める声に足が止まる。
「・・・・私の娘、ユジンを泣かせたら、私は死んでも許さない・・それだけ聞き届けてくれるなら・・あなたたちの結婚は許してはいけないと思ったけれど・・ユジンが、ジュンサン、あなたがいないと生きていけないと言うの。・・ユジンがいなくなってしまえば私だって生きていけない・・本当に、他には望まないから。ユジンを泣かさない・・それだけ・・それだけ約束して・・ユジンを頼みます・・」
「ママ・・」
ユジンがお母さんに駆け寄り、泣きながら抱き合う。
こんなに、愛情の深い、心に響く結婚のお許しがあるだろうか。
ユジンを育てながら、ユジンの将来に多くの夢を持っていただろうに・・
僕に望むものはただひとつ・・・
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