8 <共に生きるということ>


ユジンが退院できる日が来た。



サンヒョクとヒジンが退院手続きをしている間、僕はユジンと病室で二人きりになった。



「ユジン。僕と結婚してどんな苦労があるのか、考えたことある?」

「なによ。どうしたの?」

「僕の目が見えないと言う事は、きっとユジンが考えもつかない苦労があると思うんだ。仕事だって、今はパートナーに恵まれているけれど、思い切り出来るわけじゃない。ユジンがイライラする事だって、負担だって多くなるんだ。 何をするのにも、ユジンに助けてもらったり、気を使わせてしまうと思うんだ。 それから――――」

ユジンの指が僕の唇に当たった。

「シーッ。ジュンサン。あなたがそばに居ない事より辛い事なんてないわ。ねっ、そうでしょ?」

「ユジン、ちゃんと考えて。実際の結婚生活は、思っているよりはるかに難しい事があるって事。」

「結婚する前から結婚後の心配ばかりするなんて・・ちょっと、ジュンサンらしいかな(笑)」

「茶化さないで聞いて。これは―――」

「ジュンサン、抱きしめてくれる? ねえ、ホラ早く!」

僕は戸惑いながらも言う通りにユジンを抱きしめる。

「・・うん・・私ね、辛い時や困った時、寂しい時に、いつもこうしてくれるだけでいいの。こうしてくれるだけで幸せなの。わかった?」

「・・ユジン・・」



ユジンのお母さんが病室へ入って来た。



ユジンのお母さんは僕を見るだけでも辛いはず。

僕が早く気付くことが出来たなら姿を隠すことも出来たのに・・

気まずい雰囲気の中、身の置き所のない僕にユジンは心を痛めているだろう・・



ユジンが僕を引っ張るようにして廊下に出た。

ユジンのお母さんの泣きながら呼び止める声に足が止まる。



「・・・・私の娘、ユジンを泣かせたら、私は死んでも許さない・・それだけ聞き届けてくれるなら・・あなたたちの結婚は許してはいけないと思ったけれど・・ユジンが、ジュンサン、あなたがいないと生きていけないと言うの。・・ユジンがいなくなってしまえば私だって生きていけない・・本当に、他には望まないから。ユジンを泣かさない・・それだけ・・それだけ約束して・・ユジンを頼みます・・」

「ママ・・」

ユジンがお母さんに駆け寄り、泣きながら抱き合う。



こんなに、愛情の深い、心に響く結婚のお許しがあるだろうか。

ユジンを育てながら、ユジンの将来に多くの夢を持っていただろうに・・



僕に望むものはただひとつ・・・




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