僕はプロポーズをし、ユジンはそれを受けてくれた。
気持ちを確かめ合った僕たちは、散歩をしていても家へ帰ってからも心が弾んでいた。
ユジンは今まで聞いたことのないくらい大きな声を出して、楽しそうに笑っていた。
ふいに思った。 『ユジンの顔が見たい』
どうしても、自分の目で確かめたかった。
ユジンが心から笑っているのか、その瞳の奥に陰が差してないかを・・
僕はユジンに尋ねた。
「ユジン、結婚のこと、君のお母さんは許してくれるだろうか・・?」
視覚障害者となった僕を、ユジンの夫として受け入れるのは難しい事ではないか・・
ユジンを、ユジンの将来を、きっと心配するだろう。
お母さん想いのユジンだから、結婚を反対されたら、また辛い思いをさしてしまうのではないか・・
ユジンは明るく答えた。
「ジュンサン!大丈夫よ。反対されたって私が絶対に説得するもの。私に任せといて!あなた、そんなこと心配しているの?」
何も心配は要らないと言っている様にユジンは笑う。
そして、ユジンが笑っていてくれてホッとしている自分に気付く。
N.Yへ来てから、ユジンは、時折、無理している気がしていた。
憂鬱な気分を僕に悟らせないように努力していた気がする。
そんなユジンを感じているのは、僕はとても辛かったよ。
もし、ユジンが涙を流したら、僕は息が出来ないくらい苦しいよ。
君の悲しみが、何倍にもなって僕の悲しみとなってしまうから・・
数日ユジンと一緒に過ごしていたら、ユジンのいない暮らしが、どんなに味気のないものだったのか思い知ったよ。
自分で決めた事だったけれど、ここ何年も、ユジンと一緒にいなかった事を後悔している自分がいる。
ユジンの休暇がもうすぐ終わる。
そしたら、ユジンはソウルへ帰らなくてはならない。返さなくてはならない
僕は・・僕は・・まだすぐにはN.Yを離れられない。
本当に、僕とユジンは結婚しても良いのだろうか・・
考えても・・考えても・・確信が持てない・・・・・
僕の心の中とはうらはらに、ユジンは何の心配もなさそうに、明るく笑っている。
手を伸ばしユジンの頬を触ってみる。涙の跡を確かめるために・・
ユジンは泣いてはいない。本当に笑っているようだ。
僕も、心の底から笑えたら・・。
心の底から笑えたら、どんなにいいだろう・・
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