3 <決 心>


朝早くに電話が鳴った。
「・・ユジンそこにいる?」
サンヒョクだった。
「ああ、来てる。まだ眠っている。サンヒョク・・ユジンは」
僕が言葉をいい終わらないうちに、サンヒョクは話し始めた。
「いいか、一回しか言わないからな。ユジンと結婚しろよ。二人にとって一番幸せな方法だと思う。ジュンサン、目が見えなくたっていいじゃないか。躊躇う気持ちは分からないではないけれど、ユジンはいつまででも君の事を想ってる。きっと、ユジンにとって生涯ただ一人の人は君なんだ。・・僕が言うのだから間違いないよ」

「...」

「もし、ユジンが失明して、ユジンが別れたいって言ったら、お前別れられるのか?・・・僕はジュンサンの味方だよ。ユジンの味方でもあるし・・僕の言いたいこと分かった?」
「・・ああ」
「じゃあ」
サンヒョクは自分の言葉が終わると電話を切った。ジュンサンの答えを待たずに・・


ユジンを幸せに、絶対幸せに、出来るのか?
ユジンを守ってやれるのか?
僕に出来るのか?



「ユジン・・おはよう・・よく眠れた?・・昨日は、その・・独りにしてゴメン・・せっかく来てくれたのに・・」
「ううん、私が突然来たんだもの。ゴメンナサイ・・」
その時は、ユジンからしてくれたプロポーズについて、お互い触れなかった。

「昨日ね、エイミーさんに会ったわ」
「あっ、連絡するのを忘れてた。ユジンも驚いた?・・えーっと、エイミーさんは」
「とっても綺麗な人だったわ。説明してもらいましょうか」
ユジンは怒っている振りをしたが、最後まで言わないうちに笑い出していた。
「楽しい人だったでしょう」
「ええ。私たち仲良くなったの。これであなたがNYで何をしても筒抜けよ!」
「・・そうか・・ユジンは味方を増やす天才だね。いつの間にか、キム次長もエイミ−さんも陣営に引き入れてる(笑)」
「ジュンサンは秘密の多い人だから、工夫がいるのよ(笑)」
「ふう、ユジンは手強く成長したんだ。こっちも工夫しなければ。(笑)」
僕は口ではこう言いながら、心の中で言った。
(もう秘密なんて待たないよ)
久しぶりに、本当に久しぶりに軽口を言い合った。出逢ったあの頃のように..

「今日、お仕事は?」
「ユジンがN.Yまで来てくれたんだ。今日はサボるよ。行きたい所ある?その・・案内できるかは分からないけど」
「ありがとう、ジュンサン。・・私ね、あなたの思い出の場所に行きたいわ」
「思い出の場所?」
「んー・・母校なんてどう?」
「学校行ってどうするの?」
「どうしようかしら。恩師にあなたの学業態度を尋ねるのは?」
「ミニョンは結構まじめな優等生だった」
「アラ? わからないわよ。案外、面白い裏話があったりして・・」
ジュンサンは天井を仰いだ。

久しぶりにキャンパスをユジンと歩くのも悪くないな・・


ユジンが身支度する間にビルに電話を入れた。
「ビル、悪いんだけど今日休むよ・・いや、体調はいいよ・・」
「どうしたんだよ。お前がずる休みなんて・・天地がひっくり返るぞ!この貸しは大きいからな。よく覚えておけよ」
「ああ。借りは返すよ」
「仕事より大切なものでも見つかったのか?」
「まあ、そんなところだ」


バスで工科大に向かうことになった。
ユジンと、また一番後ろの席に二人で座った。
正門までの緩やかな坂を、僕たちは腕を組んで歩いた。
時折、『カサッ』と落ち葉を踏む音が聞こえてきた。

しばらく歩いて、足を止めた。
「ユジン、こっちを向いて」
「何?」
僕はユジンの首にネックレスをかけた。昨日君が僕にしてくれたように・・
「・・返すって意味なの?」
「その反対!よく見て」
ユジンはかけてもらったネックレスを見て驚いたようだった。
「これ、持っていてくれたの?」
僕は少し微笑んだ。
それはポラリスのネックレスだった。
本当は、あの時・・、海に捨ててしまったけれど・・
また同じものを見付けた時、手に入れずにいられなかったよ。ユジンとの思い出の品だったから・・

「ユジン。僕から正式にプロポーズする」


「涙を流しているのを見るのは、本当に辛いから、あまり泣かないと約束して。そして、何事も我慢しないで、辛い時は辛い、大変な時は大変と言って。いつでも、自分の気持ちに素直であると約束して


「ジュンサン、ちょっと待って。ゆっくり言って。ちゃんと全部覚えておきたいから・・いつか・・私達の子どもに、プロポーズの言葉を聞かれてもちゃんと答えられるように・・」

「愛してる・・ユジン」


でも・・ユジン。君は考えたことがあるか?
僕と一緒になる事は、愛だけでは君にとって大変だと言う事を。

未来を知ることが出来るなら、未来を覗いて見ることが出来るなら・・

僕は、僕に出来る最善を、最善を尽くします。

幸せな日々がすごせるように・・

ジュンサンは祈りにも似た気持ちで、決心した。
いつの間にか、空から冷たい雪が落ちてきていた。




冬のソナタ To the Future 2005 Copyright©. All Rights. Reserved
当サイトのコンテンツを無断で転載・掲載する事は禁じています