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To the future 番外編
(星の揺りかご24・回転木馬38から)
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ー赤い糸の伝説って信じてるー
頬を染めて君が呟くようにいった。
ーああ、もちろん信じてるー
ーそうだったわね・・・・ー
君はクスクス笑った。
パサッと週刊誌をソファに放った。
雨足がさっきより強くなったのかもしれない。
ー ひとりで大丈夫かしら ー
頭を掠めた言葉におもわず苦笑した。
放り投げた週刊誌を手に取り、キッチンの流しの下に仕舞った。
ー 何も隠すことなんかないわよね ー
イ ミニョンが華々しく復活したあの日から、私たちの生活は一変した。
今までどおり何も変わらないと思っていたが、世間はそうはさせなかった。
視力を失う以前の彼を知る人々、障害をも克服して地道な仕事をこなしていたことを知る人々、
さらには新しい建築家としてのイ ミニョンを迎え入れた人たち。
自らが知る不自由さを医療関係の建物だけではなく、公共の場で発揮できる手腕に彼は時代の波と共に巻き込まれていった。
子どもたちもそれぞれが自分の道を進みだし、賑やかだった家も気が抜けるくらい静かになっていた。
どこへ行くにも手を取り合っていた日々が遠い頃のように思えた。
「ユジン、最近ポラリスには出勤してるの」
「完全に非常勤にしてもらったの、チョンアさんのこれだけはという仕事だけよ」
「・・・今まで忙しすぎたものね、子どもたちの手も離れたし、僕の手も離れたからね・・・そうだね・・・ゆっくりした方がいいよ」
「ありがとう、チュンサン。でも大丈夫なの?」
「ん?なにが」
「忙しすぎるんじゃないの、チョアンさんが心配してたわよ」
「今まで休みすぎていたんだよ、これくらいがちょうどいいよ」
「ユジン、わかってるんでしょ。私があなたを非常勤にしたわけを」
「ええ・・・・」
「もうあなたって昔っからそうなのよ」
「エッ、なにが?」
「自分さえ我慢したらって、ね」
「そんなことはないわ、ないはずよ・・・・チョンアさん・・・・」
「パパ、どうしてパク ドンファンが秘書なの。社内コンペ最終審査まで残ってセウングループの留学制度を使うって時になんでパパの秘書なの」
ビョルが飛び込んできた。
ギュッと両手を握りしめ、大きな目には今にも涙が溢れんばかりだった。
「ビョル、待って。キチンと俺の話を聞いて」
ビョルが開け放したドアからパク ドンファンが静かに声を掛けた。
「こんばんは、こんなに遅く申し訳ありません。突然上がり込んでしまってすみません」
ビョルの言葉に驚いているチュンサンとユジンに向かって、ドンファンがスッと頭を下げた。
立ち尽くすビョルの肩をドンファンがそっと抱いた。
「ビョルしっかり俺の話を聞いて、それなりの理由があるんだよ」
「パク ドンファン、どうやら僕のことのようだね」
「キム次長から明日付けでイ ミニョン理事の専属秘書となるようにと指示を受けました」
「僕はまだ何も聞いてないよ」
「きっと明日の朝におっしゃるつもりだったのでしょう」
「でも何故急にそんな人事があるんだ、ビョルが言うとおり君はアメリカでの留学が控えているはずぞ」
「・・・次長には次長のお考えがあると思います。それに俺は近くでイミニョンの仕事が見られるってうれしいんです」
「パパ本当になんでそんなことになるのか全く理由が判らないの?」
「ああ、わからないな。忙しくなってこのところ大変だったので次長は僕にシニさんという女性秘書を付けたばっかりなんだ」
ハッとした顔をしたビョルが自室から何かを手にして戻ってきた。
「パパ、これのせいよ」
ビョルの手には先日ユジンが見ていた週刊誌が握られていた。
「ビョル!どうしてそれをあなたが!」
「ママ、キッチンで見つけたのよ、なんで隠してあるの。ママはパパにこれは何って聞いたの?」
「・・・・・・驚いたね」
週刊誌から目を上げるとチュンサンは呆れたように苦笑した。
「まさかユジンこんなことを信じたわけじゃないよね」
「信じてなんかいないわ、でもね・・・・・・」
「ねぇユジン」
「全くのでたらめです」
凛とした深みのある声がチュンサンの言葉を遮った。
「ビョルのお母さんいえ、ポラリスのユジンさん。そこに書いてあることは全くのでたらめです。理事の専属秘書に抜擢されたジニさんが何を思ったのか、ホテルでの打ち合わせに理事と行くことを利用して知り合いの記者に誤解を招くように仕向けたのです」
「誤解を招くような写真ばかりだな」
チュンサンが顔を顰めた。
「パパ、こんなことはないのよね」
「参ったな、ビョルに疑われていたのか」
「だって、ママがこれを隠してるし、この頃元気がなかったから・・・・・」
「ユジン、僕も君が元気がないのが気になって今日は早く帰ってきたんだ、どこか具合でも悪いのか」
チュンサンの手がユジンの手に重なった。
「ううん、そんなことはないわ。でもねチュンサン、ゆっくりした方がいいよって言ってくれたでしょ、もう私は必要ないのかなって寂しくなったの」
「・・・・ユジン」
「あの、俺はもう失礼します。俺がこんなことを言うのは変ですが、次長が言ってました、ユジンさんが前みたいに理事に寄り添ってくれたらこんなに苦労する人事はしなくてもいいのにって。ではまた明日、失礼します」
「ドンファンさん外まで送るわ」
「玄関ドアのところでいいよ。外まで来たら心配で俺がまた戻らなきゃならないよ」
「じゃあやっぱり外まで・・・・・」
ビョルとドンファンの声が遠ざかる。
闇の中で繋いでいた僕とユジンの手、その温もりが僕の世界であり景色だった。
光りを取り戻したとき、
見えるものが見えなくなり、見えないはずものが見えた。
ユジン、ユジン愛してる、あいしているよ
チュンサン、チュンサン、チュンサン愛してます
カーテンの隙間から差し込む眩しい一筋の光、
朝の儚い輝きが僕たちを包んでいた。
頼りない赤い糸の如く。
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