「サンヒョクの雪融け」  番外編  

                                      by komomo                                    


−赤い糸の伝説って信じてる−

頬を染めた君が呟くようにいった。

−ああ、信じてる。チュンサンとユジンを見てると信じざるを得ないさ−

−・・そうだった・・わね−

君がクスクス笑った。





「ねぇサンヒョクさん、赤い糸の伝説って本当だと思う?」


見上げてくる黒い瞳 答えないと許さないって感じの迫力が漲っている。

「唐突になんだよ なんかの下調べなら他をあたっ」

「へぇ〜そんな風に言うんですか、あっそ。この前の夕食の約束も、デートの約束も、キャンセルに次ぐキャンセルはどなたがしたんでしたっけ?」

「ん〜。ん?この前はウンヒがキャンセルしただろ?」

「そう・・でしたっけ? そんなことじゃなくて赤い糸の伝説です!」

「自分で言ったくせに」

「なにか言いました?」

「いえいえ、赤い糸伝説ってあれだろ?恋人たちの赤い糸だろ?」

「愛する者同士の赤い糸です」

「どこがちがうんだよ?」

「・・・。夫婦になったって・・・赤い糸だっていいじゃないですか」

「はいはい。ほ〜ら、見てごらん。僕の小指からウンヒの小指」


僕が指差す方向に顔を動かすウンヒ。
ウンヒの前世はどんぐりを見つめるリスに違いない・・そんなくだらないことがふっと頭を掠めた。
途端にウンヒの目が鋭くなる。


「まじめに答える気あります?」

「気がないと思うんだ・・はぁ〜」

「サンヒョクさんはまじめに答えてくれると不肖ウンヒは信じています」




「まず、赤い糸伝説がなんで今夜の議題なのか教えてくれ」

「・・いいじゃないですか。夫婦の会話です。 その答えによってサンヒョクさんの意見はちがってくるんですか?」

「そんなにちがってくるわけじゃないけど」

「じゃ、素直に答えてください」

「リビングで話さない? なんで玄関先なんだよ」


僕はぐるっと辺りを見回すふりをした。

ウンヒは舌をペロッと出すと付け足すように「お帰りなさい」と言った。





晩御飯が済みリビングでくつろいでいると、ウンヒが「さっきの話の続きですが」とコーヒーカップを2つ握ったまま僕の隣に腰を下ろした。


「赤い糸の伝説。だね?」

「あっ、ちょっと待っていてください。必要なものを取りに行ってきます」

「必要なもの?」

「待っててくださいね!」



待てって・・ココは僕達の家だろ?どこへ行くって言うんだよ・・僕は反論を口にする間もなく、ウンヒは小走りにリビングから姿を消した。

僕もいいことを思い付いた。ウンヒの反応を予想しながら僕もソファを立った。



「なにしてるんですか?」

「あったあった。これこれ、赤い糸の伝説を語るに相応しいだろ?」

僕は小箱をウンヒに手渡した。

「キャンドル?」

「貰ったんだ」

「Made in France」

「えっ?」

「パッケージ、フランス語で書いてあるから たぶんMade in France チェリンさんですか?」

「そう。二人で楽しんでって貰ったんだ」

「そうなんだ〜、 綺麗だな〜もったいないな〜」

「じゃ、飾っておいてもいいけど?」

「・・・・」

「悩むなら仕舞っておこうか?」

「う〜ん・・・灯してみましょう」

「決心した?(笑)」

「二言はありません あっ・・でも」

ウンヒは自分の手元を見た。

「必要なものって筆記用具だったのか?」

「だって・・サンヒョクさんが気合を入れて「赤い糸の伝説」について考察を述べてくれるんですよね?」

「おいおい、夫婦の会話をメモに取るわけ?」

「だって・・使うんだもん。 暗いとツライな・・ あっボイスレコーダーなら大丈夫か」


たぶんボイスレコーダーを取りに行こうとしたウンヒの腕を捕らえることに成功した。


「使うって何に使うんだよ」

「・・説明」

「詳しく」

「オンニ達に説明する時に使うんです」

「は?」

「オンニ達とお昼ご飯を食べた時に、キムチーフプロデューサーだったらなんて言いそうか聞かれたの」

「それで?」

「わからないって言ったら」

「言ったら?」

「今度質問してきなさいって」

「それだけ?」

「怒りません?」

「・・・」

「ユンビオンニは運命とか胡散臭いもの信じてなさそうだわ〜って言って、ソヨンオンニは『ウンヒ、赤い糸は僕と結ばれているんだよ』とか言って口説いたに違いないって言って、答えが近いほうがパッピンスをおごることになってるの。私は聞き出してくるだけでいいんだって」


僕は軽くため息をついた。


「わかりました。オンニ達にはうまく言って、夫婦の会話優先にします」

「ボイスレコーダーもメモもなしでいいんだな」

「仕方ないですね」


ウンヒは仕事を断るかのような口調で言うと自分で耐え切れなくなって笑っていた。


「じゃ、とっておきのお酒もつけちゃいましょう!今日は飲めますよね?」

「明日は・・大丈夫、飲めるよ 家にあるものでパッピンス作る?」

「う〜む。今夜はもう少し大人な感じでお願いします。もう一度セッティングからやり直しますね(笑)」



明るすぎる照明を落としキャンドルを灯す。

しゃべり続けていたウンヒの言葉が少しづつ間遠になってきた。



ここのところお互いが仕事を優先してすれ違っていたような気もする。

でもそれが不安というよりは、帰ってきた安心感に満たされる自分がいる。

ウンヒも同じように感じていてくれるといいと思う自分がいる。




「結局、サンヒョクさんは赤い糸を信じているって言うことですか?」

「あぁ、信じているよ。チュンサンとユジンを見てきたんだ。信じざるを得ないよ」

「そうか・・そうだったわね」

ウンヒがくすくすと笑い出した。




「赤い糸ってタイヘンだと思わない? 切られたり結び直されたり」

「絡んだり、見えなかったり」

「クモの巣みたいに張ったり、投げ縄にしたり? 赤に見せといて変身!とか言って色を変えるの」

「それはさすがにちがうものだと思うぞ」

「えへへ」

「でも、一人の人と。運命の人と繋がっているのが本当の赤い糸なんだろうな・・」




肩に掛かる重みに、規則正しい呼吸音。
僕は片手でウンヒの頭を抱え込む。
反対の手でグラスを傾けた。



本当の赤い糸を見極めることの難しさを思い出し
それを見い出した時の至福に感謝して






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