ー 赤い糸の伝説って信じてるチュンソン ー


頬を染めて君が呟くようにいった。


ーああ、信じてる。僕の家の父と母を見てると信じざるを得ないさー
ーそうだったわね・・・・ー


君はクスクス笑った。





あの日、僕は君と何を話したんだっけ、まるで映画のワンシーンのように
心の映像は描き出されても、セリフのひとつひとつは酷く曖昧で・・・・・・・・。
時間が経つということはこんなことを指すのだろうか。





君と出会ったのは入学式だった。

君が声を掛けてきたんだ、いや・・・僕が声を掛けたんだろうか。


ストイックな子だと思った。
女の子ってビョルのように賑やかで表情の豊かなんだろうと思っていたから、
聡明で感情に動かされない君を見たとき、正直、苦手だなって。


でもこんなに期待を裏切られたのは後にも先にも君だけだったよ。


君は澄み切った瞳で僕を見つめながら、自分の意見もはっきり言い、
他の女の子とは違っていた。
そんな君を僕は眩しく感じていた。



でも、初恋だとは思わなかった。



僕の周りの女の子たちは、何かにつけて僕とユソン兄さんを比較していた。

そんなことには慣れっこな僕は、気にすることもなかったが、
君だけはそんなひそひそ話に腹を立てていた。


「チュンソン、何故聞こえない振りをするの」
「振りなんかしていないよ、僕と兄さんは違う人間なんだよ。
そんなこと気にしていたら息が詰まっちゃうよ」

「・・・・気にしてるから息が詰まるのよ、わかってるんでしょ」


僕は大きくため息を吐きだした。


「そうだよ、君の言うとおりだよ・・・・・・そして僕はユソン兄さんが大好きなんだ」

「・・・・・・ごめん、言い過ぎたわ」

「いや、ありがとう」



季節が巡って僕たちはいつも側にいた。
夏の太陽も秋の長い影もいつも一緒だった。



でも、初恋だとは気が付かなかった。



期末テストを控えて僕たちは図書館に籠もっていた。

ソウルでも指折りなトップ校で、常に上位にいる君に僕は敬意を表しながらも
負けるわけにはいかなかった。

さらさらと頬に落ちる髪を時折耳に掛け、鉛筆を動かしている君に僕は見とれそうになった。


ー綺麗なんだよな、彼女ー


そう思った瞬間、・・・・・なんだろう僕の胸はキュッと音を立てた。



「寒い」

図書館から出た僕たちは肩を竦めた。

「初雪警報が出てたわよね」

「警報?」

「知らないのチュンソン、有名なラジオ番組よ。確か昨日、明日は初雪になるかもって」

「知ってる知ってる、あの番組だろ。初雪にデートをすると恋が実るって」

「あら、そうじゃなくって。一生結ばれるって」

「そうだっけ?後で聞いてみるよ・・・」

「誰に聞いてみるの」

「・・・・・番組やってる人にかな」




「・・・・雪よ・・・」

「ホントだ、これって初雪デートかな」

「・・・チュンソン」





広い世界で絡み合った赤い糸を見つけるのは至難の業かもしれない。

でも、今僕はあの時君と小指で繋がっていたのは、初恋という名の白い糸だったと思っている。

赤に染まる前の真っ白い糸、細くって頼りなくって吐き出されたばかりの繭のような糸。

その糸が薄く色づきそして赤くなるのを、僕も君も若すぎて待ちきれなかった。



いや、違う。

君に恋した天使が自分の胸に矢を突き刺し、君を攫っていたんだ。




君を失って僕は知った。

僕の初恋はあの時だったことを。






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