To the future ―星の揺りかご―終 
星の揺りかご

流れゆく時はすべてに公平である
いかなる優劣も付けず
淡々と刻んでいく
この世に生を受け朽ち果てるときまで
 
抜け出ることの出来ない苦しみも
果てしない哀しみも
溢れでる喜びも
誇らしげな晴の日も
 
寸分の狂いもなく
 
長いのか短いのか
人それぞれ想いは違う
人の生の濃さなのか
生命の炎なのか
消えゆくときの一瞬の夢なのか
 
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空港にいた。ここから飛び立つのは何度目になるのだろう。
いつもと同じ僕たち4人と父と母。
ただ違うのは、送る者と送られる者、涙が悲しみのためだけではないということ。
 
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「・・・・はいユソンです」
「今?午前4時10分・・どうしたの」
「君らしくないじゃないの、いつだって・・・・」
「・・・きめたのか?」
「決めたわ、ユソン」
「・・・美久」
 
「決めたわ、ユソン」この言葉に酔いながら、僕はテラスに立ち海を見つめていた。
 
お日様に追い立てられるように最後の星が静かに消えた。
あーまた新しい朝が来た。今日も暑くなるだろう。
 
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パパとママがアメリカに発った頃、わたしは決断の時を向かえていた。
予てからの夢であった、バレエコンクールの国内予選を。
どんな舞台もいつもパパとママがいてくれた。
いろんなものを犠牲にして、厳しいおけいこを積んだこの舞台にパパとママがいない。
心細さと不安に震えながら「誰でもない自分のために、自分の人生のために」踊り終えた。
その時、わたしのポラリスが消えた。
 
あの日、あれほどの自信と強さを持ったパパが怯えていた。
弱さを持っていたのは、私だけではなかったのだ。
 
不死鳥の如く蘇ったようなパパ、
そんなパパを支えひたすら見つめ続け、
娘のわたしでさえ驚くほど美しさの増したママ
 
あなた達の子どもであることに感謝を捧げつつ
わたしはわたしのポラリスを探し続けよう。
 
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君は幼いときから、気がつくと僕の隣にいたんだ、あの日までは
僕の人生は君と伴にあると信じていた、あの日までは
あの日、君の苦しみは僕では癒せないことに気づいた
でも今なら心の底から思える
「ユジン、君の幸せは僕の宝だよ」
 
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「ミニョン、1度は私を愛してくれた人」
私の心の傷は深く、奥底で微かに血が流れていたようだ。
まさか私の傷を癒してくれるのが、あなたの息子ジュンソンだとは思わなかった。
ジュンソンはミニョンだったあなたのまなざしで、いつも私を慰めてくれた。
そして、私と彼に「三色スミレの花汁を飲ませたのよ」妖精パックと一緒になって。
あなたがいつか言ってた「君に必要なのは僕からの電話や僕じゃなくて、時間だ」
この意味が今やっと分かったみたい。
あなたの息子ジュンソンが背中を押してくれるわ、
今なら彼アランの胸に飛び込めそうな気がする。「ミニョンお別れね」
 
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イ ミニョンの息子として同じ世界に飛び込むのは並大抵のことではないだろう。
しかし険しい山だからこそ登頂した喜びは大きいと思う。
今、華麗に世界の檜舞台に返り咲いた、イ ミニョン
その傍でこれから先歩んでいけるのだ。
イ ミニョンの息子ではなくいつの日か [カン ミンソン]と呼ばれる日まで。
 
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ーチュンソンあなたは恋のキューピットなのー
ー・・・?ー
ーあなたの傍にいるとどんな子も素敵な笑顔になるのよ。
 するとね、不思議なことにみんな恋人ができるのよ、
 女の子の間じゃ、チュンソンは素敵だけど、高嶺の花よって、
 でもあなたのまわりにいると恋人ができるって評判なのよ、
 ねえ、あなたはANGELなのー
ー・・・そうなのかい・・ー 僕は心の部屋に問いかけた
 
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それぞれの出発ゲートに立っていた。
ジュンソンは彼の言う「僕に恋してる彼女たちの街」パリへ
ミンソンは父の母校へ
父ジュンサンと母ユジンは「国際医療施設設計部門」の受賞のためにストックホルムへ
そしてその後、チェリンの花嫁の付き添いとしてパリへ
さらにセウングループの代表理事就任のためアメリカへ
僕ユソンは美久の待つ日本へ
可愛いビョルは自分の道をみつけるためにソウルにとどまる
 
飛び立つ飛行機から地上の灯りを見る
まるで天空の星々のようだ
世の中は見方によって逆転する
眩しすぎる光の中では目を閉じ
恐ろしい暗闇で目を見開く
 
日々新しい星々を見てるがそれは幾万光年もの昔の輝き
 
そう僕たちは地球という揺りかごで宇宙に漂っている
いつか自分が住む星をみつけるために
 
ー米航空宇宙局(NASA)の赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」がとらえた
 生まれたばかりの巨大な星が数多く集まっている銀河系内の「星の揺りかご」をー






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