To the future ―星の揺りかご―24 
手を重ねて


カン ミヒとイ氏の喜びは余りあるものだった。
これほどにまでジュンサンいやミニョンの復活を望んでいたのか
彼らのこれまでの苦悩を窺い知ることができた
イ氏は今や世界でも屈指の建設グループに成長したセウングループの経営権をミニョンに譲ることを提案した。
 
「ミニョン、私には残された時間は少ないんだよ、前の君なら各グループの理事達も賛成しないだろうが蘇った君を否定するものはいないだろう。君の実力を知らないものがいないのだから、後継者としての発表をさせてくれ」
「お父さん、あなたは仕事に私情を挟む人でないことは、良く知っています。このようなお言葉は身に余るものがあります。うれしくないと言ったら嘘になり ます。僕のミニョンとしての10年を支えてくださったお父さんの言葉です。ですがあと数カ月発表を待ってもらえないでしょうか。イ ミニョンとして期待に添える復活をしてからでも遅くはないと思いますが」
 
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その年の12月の初め、ジュンサンとユジンはソウルに戻った。
 
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病院を去るとき担当医が
ーカンさん、待ってますねーと、ウインクをした。
ジュンサンはにっこり笑って
ーはい、戻ってきますよ。いつかあなたの夢を持ってーと答えた。
 
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空港にはキム次長が待っていた。
「どういうことなんですか、しばらく出社はしない、帰ったことは伏せておいてくれ、これまでどおりマルシアンは任せるって、理事!!」
「先輩!」
「・・・ミニョン見えるようになったんだろ・・・ミニョン・・・ミニョンおめでとう・・・。ユジンさん・・・良かったですね・・・」
あのシャイなキム次長が人目もはばからず号泣した。
「・・・・先輩・・・・」
「ああ、わかってるさ、肝心なことは言わないミニョンってことは、今回はお祝いって事で何でも聞いてやるよ」
「ありがとう先輩」
「もう、調子のいいときは先輩なんだよね、こき使うときは次長でさ」
 
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サンヒョク達にも手術の成功はアメリカから伝えていた。
ソウルに戻った時、お祝いをしようと申し出があったが、しばらく待ってほしいとジュンサンが答えた。
驚き心配したサンヒョクはユジンに理由を尋ねても歯切れが悪く
「ジュンサンの手術は本当に成功したのか」と怪訝そうに聞くほどであった。
 
ソウルに戻ったジュンサンは、時間を惜しむかのように自宅の書斎から出ることはなかった。
そこにはユジンも立ち入ることが許されず、寝る時間以外そこにいた。
食事さえも声を掛けるのが憚れるほどだった。
その年のクリスマス、そして新年も忘れたかのようだった。
ユソンとジュンソンも何かを知ってるかのように、クリスマス休暇に帰ってこなかった。
 
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「ねえママ、パパどうしちゃったの」
「パパにはパパのお考えがあるのでしょ、心配しなくてもいいわよ」
 
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食事を手早く済ませると
「ユジン、今夜は遅くまで掛かりそうだから先に休んでて」
そういうと書斎に消えた。
ミンソンとビョルは声を掛けるまもなく姿を消したドアを唖然と見ていた。
さすがにユジンも不安になってきていた。
 
「・・・ユジン・・ユジン・・おきてユジン」
「チュンサンどうしたの、何時なの。まだ起きてたの」
「ユジン、来て、早く、見せたいものがあるんだ」
長年の習慣で手を繋ぎ廊下を歩いた。
ユジンはふと思った。
ー私が手を引くのではなく、彼が私を引っ張っているー
言いようのない幸せが胸に迫った。
 
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「!!!・・・これは!!!・・・・・」
そこにはコンペ参加作品 ー医療施設建築ー とあった。
「イ ミニョンの復帰作品だよ」
「いくらお父さんが後継者にっておっしゃっても、世間はそうは見ないよ。やっぱり息子だからだなって、それには第三者の評価を求めることが必要なんだよ。前からこのコンペのことは知ってはいたんだが、前の僕には描けなかったんだ、でも今の僕ならできると思ったんだ、見えなかった僕が一番適切に描ききることができるって」
設計図をめくりながらユジンが言った。
「あのイ ミニョンがコンペに・・・・・驚くわよ・・・。新人達は自分の巡り合わせの悪さにガッカリするわよ」
ユジンの声が涙で詰まった、そして手が止まった。
「ユジンごめんね、時間がなかったんだ、これを仕上げる自信もなかったんだ。だから君がどんな思いで見ているかは分かっていたんだが、出来上がるまで言えなかったんだ。締め切りは明日いや今日なんだよ。やっと間に合ったよ」
「今日締め切りなの!大変!」
 
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ミンソンとビョルが起きてきたとき、もう朝食を終えたふたりがいた。
「どうしたの!」
「ママがこんな時間に!」
「あのね、いいことがあるの」
ユジンの笑顔が輝いている。
ー彼女のこの笑顔何年ぶりだろうー ジュンサンの心が躍った。
「帰ってきたら教えてあげる」
「ええーーそんなーーねえ、教えてよ」
「ところでこんなに早くどこへ行くの」
設計図の入ったケースを振ってジュンサンが答えた
「イ ミニョンの設計を売り込みだよ、事務所の人が来るのを待つのさ」
軽やかな笑い声を残して
ジュンサンとユジンが手を繋いで玄関から飛び出していった。






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