To the future ―星の揺りかご―17 
あいしてる

海はまだ微睡み
水面に映るすべてのものが
少し酔った表情で人々をみつめる
 
 
手を伸ばすとすぐそこに
安心しきった寝顔をみる
ほんの僅かなシーツの衣擦れを
敏感に察し
彼女の目が開く
穏やかに包み込むような視線
 
この瞳でいくつの時間を通り過ぎてきたのだろうか
僕の代わりに見なくともよいものを見
僕の代わりにいくつのも涙を流し
僕の代わりに僕になって
 
慈しみの瞳は昔と変わりはしない
 
手を伸ばし彼女の顔をふれていく
目よりも確かな僕の掌で
そっと閉じられた目にくちづけをする
擽(くすぐ)ったそうな微笑み
はにかんだような瞳で僕を見つめ
僕の胸に頭をあずける
 
いつも鼻孔をくすぐる彼女の匂い
この胸から擦りぬけられることを畏れ
確かめるように抱きしめる
 
ーあいしてるよ ユジンー
 
 
人は喜びは分かち合えるが、
哀しみを共有することはできない
喜びのかたちは似ているが、
哀しみは人の生の数だけ異なってる
この言葉に
わたしと彼が世間とは違う歩みをしていたことに
今更ながら気付いた
 
彼の哀しみはわたしの目をとおして癒され
彼の喜びはわたしの目でひろがる
 
わたしのすべてを知ってる彼の掌
その手に包まれいくつもの時を通り過ぎた
 
彼の温かな瞳にわたしの心が覗かれるとき
わたしには至福の時が訪れる
 
彼の胸に強く抱きしめられたとき
彼の心の家にわたしは隠れる
かれの温かみに包まれどこか懐かしい
ジェリービーンズのような彼の家
 
ーあいしているわ チュンサンー
 
火照った足の裏を夜を呑み込んだ床が冷ます
カーテンを開け新しい朝を迎える
若者達の声が鳥の歌声のように響く
 
おねぼうさんのパパとママお散歩にいちゃうわよ
 
2階の窓に寄り添うふたり
よっつの愛のかたちが海につながる小径を駈けだした
花の滴がはじけ飛ぶが如く
よっつの愛のかたちが遠ざかる
 
森の中の家に静謐(せいひつ)の時が流れている。
 
ーそう・・あいしてるー






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