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To the future ―星の揺りかご―8
大切な人
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「お母さん、ユソンです」
「ユソンいつ帰ってくるの?去年だったらもう帰ってたわよね」
「・・・忙しいんだ・・・ごめんね」
「そう・・でも帰ってくるんでしょ」
「多分8月中旬頃になると思うよ、でも9月前にはこっちに戻りたいし・・」
「お父さんと変わるわね」
「ユソン、忙しいのか・・・・」
「・・・・・」
「お母さんはビョルが遅刻しそうなんで、今、車で送っていったよ
お母さんが心配するといけないからって、
おばあさまが会社に電話をくれたんだよ、
ユソンが心配だって
何が心配なのって聞いてもなかなかおっしゃらなかったんだけど
毎日、女の子と遊んでいるみたいだって、この間は女の子を泊めたって」
「・・・・・」
「でもその後、おじいさまから何も心配することはないって
わざわざ電話が入ったんだ」
「・・・・・」
「ユソン、お父さんも心配は心配だよ。でも、ユソンのことは信じてるから」
「・・・・・」
「いつかユソンにこれだけは言っておきたかったんだ。
誰かを愛したとき本当はその人のためではなく、自分のために
自分の心の重荷を下ろすために自分の心を気持を押しつけないでほしい、
それは自分が楽になりたいためなんだよ。
黙っているのはもどかしくって、石が載ってるみたいに心が重くても、
相手を傷つけたり苦しめることだけはしないで・・・・・」
「お父さん・・・・お父さんの恋は苦しかったの・・」
「・・・」
「お父さん、僕は今一緒にいられるこの時間を大切にしたいんだ
僅かなこの夏を一緒に過ごしたいと思っている
だから、わがままなことはわかっているけど・・・」
「帰れるようだったら帰っておいでユソン。
お母さんも君のことを愛していることを忘れないでね」
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お父さんの言葉が浸みた。
僕は美久に何を望んでいたんだろう。
再会してまだ三日なのに・・一気に時が流れたようだ。
僕がこの夏、美久に出来ることは・・・・・・。
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「美久、今日からハングルは駄目だよ」
「エッ、どうして」
「美久は何のためにここまで来たの、僕に会うためかい。違うだろう」
3時で授業が終わって宿題を山ほど抱えた美久を図書館に連れて行く。
閉館の時間に追い出されるまで粘って勉強をした。
夕飯は僕がハンバーガーを買っておくか、
リュさんにこっそり頼んでお弁当を作ってもらって時間を惜しんで食べた。
図書館が閉まると美久を学生寮まで送っていく。
部屋の前で閉まったドアを見つめ立ち尽くす僕がいる。
2度目の金曜の夜が来た。
「あれ?勉強じゃないの」
「金曜の夜はお休みだよ、神様に感謝しなくちゃ」
「どこへ行くの」
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インフォメーションで同意書にサインする。
ーご一緒に写しますか?ー
ーねえどうなってるの?ー
ー一緒だと写す人がいなくなちゃうし・・どうしようー
ー今、交代の時間だから手伝おうか?ー
ーいいのかい?ー
ーねえ何のこと?ー
ー写しますよ、素敵な顔をしてー
ーさあ、美久急いで外へ出て、5分後だよね?ー
ーええ、記念撮影スポットを確保して下さいー
美久、見てご覧、
タイムズスクエアの電光掲示板は数秒間
今撮った僕たちの顔を映しだした。
さあ、そのままこっちを向いてインフォメーションのスタッフが声を掛けた。
不思議な記念写真が出来た。
電光掲示板に映った僕たちとそれを見ている僕たち
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この10年手紙とメールだけだったので、面と向かうと旨く言葉がでません。
だからメールしました。
私がN.Yに来ることをあなたに教えていませんでした。
突然行ってびっくりさせようと思っていたからです。
でも、歓迎パーティであなたを見たとき驚きました。
私はすぐユソンだとわかったのです。だっておじ様にそっくりですもの。
あなたは気づかなかったでしょ、そして名前に惑わされmikuの方ばかり見ていた。
がっかりした私はゲーリーの作る甘いカクテルを飲み過ぎたんです。
朝、目覚めてどこにいるのかわかりませんでした。こんなこと初めてです。
そっとリビングを覗くとあなたはいなくって、リュさんと鉢合わせをしました。
リュさんは驚いて、ハングルで問いかけてきたので思わず
ハングルで話してしまいました。
そしてテーブルの上にあった携帯を持って帰ったのです。
まるで逃げるように。
寮に着いて携帯のメール着信に気づきました。
あなたはやっぱり私をわからなかったのです。
このまま日本帰ろうかとも思いました。
本来の目的を忘れて・・・・・。
「美久、今日からハングルは駄目だよ」
あの言葉から私は変わりました。
あなたの勉強に対する真摯な姿勢、私を大切にしてくれる気持ち。
私は知ってます、あなたが部屋まで送ってくれた後、
ため息と一緒にしばらく佇んでいたことを。
私の夢はあなたが医者になると聞かされたときからです。
同じ夢を持ってさえいれば・・・・・。
ただそれだけでした。
でもこの3週間あなたを見ていて私の中の何かが変化しました。
ユソンありがとう
あなたに大事にされた思い出それを持って日本に帰ります。
また、会えますね。今度はすぐに見つけてね。
ユソン、空港へ送りに来てくれますよね。待ってます。 美久
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「集合時間だわ、行かなくちゃ」
「・・・・・・」
「ユソンありがとう」美久の唇が僕の頬にふれた。
美久の腕を掴んで体を引き寄せた。
短く唇を重ねた。
美久の澄んだ瞳を見たとき、溢れでる思いを腕に込めた。
美久を抱きしめながら、美久のぬくもりを感じながら
長いキスをした。
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