「ユソンじゃないか」
「サンヒョクおじさん」
僕はテスト会場から出たところでサンヒョクおじさんに声をかけられた。
「おじさんもテストを受けてたの」
おじさんは笑いながら
「ん〜、テスト前の勉強ってことかな」
おじさんは市民楽団のコンサートを聴いてきたところだった。
ラジオのプロデューサーって好きな音楽だけをかけてるだけじゃないんだ。
「ユソン、この塾の学力テストっていうのを受けたのか」
おじさんは外の看板を見ながら唸った。
「おじさん今、塾に行ってない子どもなんていないよ。僕くらいかな」
「塾に行ってないのにテストを受けるのか」
「僕は一人で勉強するのが好きなんだ。でもパパとママが心配してテストだけ受ける
テスト生っていうのに登録したんだよ」
「へー テスト生ねー」
「おじさん、こんなことで驚かないでよ、今日のテストを受けたのは全国で1万人もいるんだから」
「エッ、1万人! (ユジンも教育ママになるはずだよな)」
そんなおじさんの顔を見ながら僕は考えていた。
「おい、ユソン頭を使っておなかがすいて・・・ユソン!ユソンくん!!」
「アッ、ごめんなさい」
「どうしたんだユソン、何考えてるんだ」
「おじさん僕、聞きたいことがあるんだけど」
おじさんはおいしいアイスクリーム食べさせてくれるお店に入った。
でもその前に、ママに連絡したけどね。
ママはとっても心配するんだ。
おじさんは「ビターチョコレートパフェ」を注文してくれた。
「これ美味しいんだぞ、チョコが苦くって大人の味ってやつだな」
「おじさんも食べたことがあるの」
「いやー、おじさんは甘いのは苦手だから」
「じゃあ、どうしてわかるの」
「・・・・ユソン、聞きたいことって」
なんかちょっとはぐらかされた気がした。
********
「おじいさまはお元気になりましたか」
「ユソンたちがお見舞いにいってくれたのは夏の初めだったかな
あの後どんどん良くなって、今は家にいて本を読んだりしているよ」
「僕たちがお見舞いにいった後も、パパやママが何回かお見舞いにいったんですよね」
「パパが来てくれると、父さんはものすごく元気になるんだ。退院出来たのだってパパのおかげかもしれないな」
「ユソン、おじいさまのことを聞きたかったのか」
僕はパフェに集中しているフリをした。
パフェのアイスは甘く、チョコは本当に苦かった。
「サンヒョクおじさんとパパが兄弟だってこと・・・・ホントなの」
おじさんはたばこを取り出すと、下を向いてライターで火をつけた。
薄紫色の煙が漂い、秋の焚き火のにおいがした。
「パパはどう説明したの」
パパとサンヒョクおじさんのお父様が同じ人で、でも、それを知ったのは大人になってからでパパはおじいさまは一緒に暮らしたことがない。
「ユソン、パパの説明、それだけじゃダメか」
そういうとおじさんは、新しいたばこに火をつけた。
「パパとおじさんのお父さんは同じ人だよ、だから二人は兄弟なんだ」
サンヒョクおじさんは独り言みたいに話し出した。
「ユソンのパパ、チュンサンが春川の高校に転校してきた時、いつも僕を見ているチュンサンに気付いたんだ。見ているっていうより睨んでいるといった方がいいかな。
でもどうして僕を見てるかわからなかった。
たぶんチュンサンもその時は僕の父さんが自分の父親という確信がなかったんだろうな。・・・僕がずっと父さんを独り占めしてきたからチュンサンは淋しかったんだろうな・・・・・。」
「・・・・・。」
「ユソン、約束するよ。これ以上のことは君が僕とチュンサンが出会った高校2年生になったら話してあげることを」
「ありがとうサンヒョクおじさん。
パパは今、おじいさまといつでも会うことが出来て幸せなんだよね」
「そうだよ。でもそれ以上に君のママと結婚できたことが幸せなんじゃないのか」
「いつも仲良しだから?」
「そんなに仲良しか!」
「うん、毎日見ている僕だって照れちゃうよ。おじさんはママと幼なじみでしょ、ママ小さい頃可愛かった?」
「・・・・とっても」
サンヒョクおじさんは冷め切ったコーヒーを飲んだ。
「さあ ユソン送って行くぞ、あんまり遅くなるとママに叱られてしまうぞ。おじさんだってユジンは怖いんだから」
サンヒョクおじさんの車で送られながら、いろんな話しをした。
突然おじさんが、
「ユソン好きな子いるの」
「エッ!」
おじさんは声を上げて笑った。
僕は美久の顔を思いだしていた。
********
「たまには兄さんとユジンの顔を見ていこうかな、熱々ぶりも見てみたいし。」
僕は車から降りて、玄関で
「パパ、ママ、サンヒョクおじさんが来たよ」
********
その声を聞きながら玄関に向かう。
玄関から明るい灯りが差し
「サンヒョク、あがって」
ユジンの幸せな声とこぼれんばかりの笑顔に迎えられた。
「ユジン、君の幸せは僕の宝だよ」
|