To the future ―未来へ― 5 ひまわり
ぎらつく太陽がすぐそこまで来ているような
ムッとする空気が梅雨空を追い払うかのような
そんな日
何も言わずただソファーに並んで座り考え込んでいるパパとママ
 
きのうもそうだった。
 
きのうの朝、電話に出たパパが「わかった、サンヒョク」
その時からパパとママが考え込んでいた。
 
「そうしよう、ユジン」
パパの手がママの手をギュッと握った。
 
********
 
その日の午後、ママの運転で僕たちは病院へ向かっていた。
 
車に揺られながら、パパの言葉が僕の頭を巡っていた。
「パパのお父さんが病気なんだ、
 おじいさまは、おまえ達に会ったら元気になれるかもしれない」
「アメリカに住んでるおじいさま?」
「いや違う、韓国にいらっしゃるおじいさまだよ」
「・・・・・・」
「パパにはお父さんが二人いるんだよ。
 おまえ達の知っているアメリカのおじいさま
 そして、サンヒョクおじさんのお父さん・・・」
「・・・・・・・」
 
混乱する僕にわかったことは、
パパとサンヒョクおじさんが兄弟ということ
おじいさまが病気ということ
 
********
 
病院の入り口でサンヒョクおじさんが待っていた。
「すまない、チュンサン」
「サンヒョク、お父さんはどうなの?」
「父さんは病気よりも気持ちが弱っているんだ、
 君達の写真をいつも母さんに隠れて見ながら、
 涙を浮かべてるんだ。そんな父さんを見ているのが辛くて・・」
「・・・」
「チュンサン、母さんはウンヒが気分転換にと連れ出しているから気にしなくていいよ」
 
サンヒョクおじさんは僕たちを病室まで案内すると
ロビーで待っているといった。
 
********
 
初めてみるおじいさま、なんて声をかけたらいいんだろう。
「おじいさまこんにちは、私ビョルです」
僕たちが戸惑っている間に、
ビョルがおじいさまに抱きついていた。
「ビョル、おじいさまはご病気よ」
「いや、ユジンいいんだよ」
「君がビョルか、お母さんの小さい頃にそっくりだ・・」
「みんながそう言うわ」
「そうか・・・・チュンサン来てくれてありがとう」
「お父さん・・・」
 
パパはベットの横のいすに腰掛けて、おじいさまの手を握った。
そのパパの肩に手をかけてるママがいた。
 
「すまない、すまないチュンサン・・・」
おじいさまが繰り返しながら涙を流していた。
 
「君がユソンだね、お母さんより大きいんじゃないのか」
「チュンソン、サンヒョクと似ているような気がするが・・」
「ミンソンは、スキー場で会ったお父さんと同じ感じがする」
 
おじいさまは僕たちを代わる代わる何度も抱きしめた。
 
僕たちはパパとママを病室に残し、病院の庭に出ていった。
 
********
 
チュンソンとビョルは外に出ると、手をつないで庭を駆けだした。
二人ともいつもちっとも落ち着いていないんだから。
僕とミンソンは、そんな二人を目で追いながら考えていた。
「ユソンお兄さん、僕おじいさまがいて良かったと思ってるよ」
あまり自分の気持ちを話さないミンソンがつぶやいた。
「僕も同じだよミンソン、おじいさま早く良くなるといいね」
「あれ?ミンソン、チュンソンが一人じゃないか。ビョルはどこだ?」
 
 
「お兄さん、ビョル見なかった」
 
 
「おばあさま、何か悲しいことがあったの、誰かに叱られたの?
 私がママに叱られて悲しいときはね、パパが抱きしめてくれるのよ、
 そうすると元気になるんだから。
 おばあさま、ビョルが抱きしめてあげましょうか?」
「そう・・ビョルちゃんのパパは優しいのね」
「うん、とっても。でもママも優しいわ、私がおいたをしないとね」
 
「ビョルー ビョルー」
 
「ビョルちゃん、誰かが探しているんじゃないの」
「お兄さん達よ、お兄さんここよー」
「ダメじゃないかビョル、一人でどこかへ行ったら」
「だって、おばあさまが寂しそうだったから」
「ごめんなさいね、ビョルちゃんを引き留めてしまってお兄さん達ごめんなさいね。
 ビョルちゃんありがとう、おばあさま元気になったわ、あなたのおかげよ。」
 
********
 
「あら、あなた今日は気分が良さそうね、どなたか見えたの」
「・・・・・チュンサンとユジンが子どもたちと・・・」
「・・・・・・・・・・あの子たち・・」
「・・・・・・・お前こそ、どうしたんだ、生き生きしてるみたいだ」
「太陽みたいな子どもたちとお話をしたからかしら・・
・・・・日なたみたいな子どもを抱きしめたからかしら・・・・」
「・・・・・」
 
********
 
僕たちはおじいさまの病室から見える花壇に立っていた。
 
「あのおばあさまがね、ここにもうすぐひまわりがいっぱい咲くっていってたわ」
 
今は、ビョルの高さ位の緑の茎が、ぐんぐん伸びて太陽をいっぱい浴びたひまわりが
黄金色に染まる頃、おじいさまも退院できるといいな。
 
僕たちはみんな同じ思いで、おじいさまの病室を見上げていた。





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