To the future ―未来へ― 2 青い空
 
「チヒョンお姉ちゃんのママとパパ、けんかでもしたの?」
小さな声で僕がそっと聞いてみた。
お姉ちゃんは、チンスクおばさんとそっくりな大きな目をもっと大きくして
「えっユソン、どうして」
 
********
 
僕が小学生になったある日、ヨングクおじさんがパパとママに
「頼むチュンサン、時々でいいからユソンを俺に貸してくれ」
と言い出した。
ヨングクおじさんとチンスクおばさんの子どもはチヒョンお姉ちゃんがひとり。
おじさんがパパに言うには、チヒョンお姉ちゃんは休みの度にチンスクおばさんと
買い物や友達の誕生会に出かけて、つまんないって。
だからユソンを借りて、一緒にサッカーやキャッチボールをしたいって。
パパは大きな声で笑い、ママとチンスクおばさんは笑いながら顔を見合わせていた。
ちょっと考えていたパパは、
「ほんとに時々だぞ、時々。ユジン、時々だけだよな」とママを見た、
ママも「そうよヨングク、時々よ」
 
その日から日曜に晴れマークが出ると、
「今度の日曜はいいかい」とヨングクおじさんから遊びの電話が入るようなったんだ。
でも、小学生だってけっこう忙しくて、本当に時々なんだ。
 
ヨングクおじさんは、まるで子どもみたい、
サッカーをやってて僕にボールを捕られると本気になって取りかえそうと走ってくるんだ。
ヨングクおじさんと遊んだ日は、僕はヘトヘトになってしまう。
それでも家に帰ると、チュンソンとミンソンが「ヨングクおじさん、おもしろかったの」て聞きたがるから、
おもしろいこといっぱいお話ししてやるの。
ママとパパも一緒に笑いながら聞いているんだ。
 
チュンソンも小学生になってから、一緒に遊びに行くようになった。
 
********
 
「今度、泊めてもいいか」ヨングクおじさんがパパに言った。
「ダメだよ、ヨングク」
「だめよ、ヨングク」
パパとママが一緒に答えた。
 
********
 
でも、その機会が突然やってきた。
パパとママが初めて一緒に仕事をしたスキー場のパーティに行くことになったんだ。
スキー場の記念周年イベントに招待されて、土曜日から行って日曜に帰ることに。
ママが言うには「パパとの思い出がいっぱいの場所、ねぇユソン、ママそこに行ったら涙が止まらなくなるかもしれない」と僕にそっとつぶやいていた。
 
その日は、僕とチュンソンがヨングクおじさんの家に泊まることに決まったんだ。
ビョルとミンソンには、ヒジンおばさんが来てくれることになった。
 
僕とチュンソンよりヨングクおじさんが大喜びしていた。
僕たちは春川のおばあさんの家に泊まることはあっても、よその家は初めて。
ちょっとどきどきする。
 
土曜日の午後に、ヨングクおじさんが迎えに来て、
僕たちはパジャマと宿題(結構ママがうるさいんだ)をカバンに入れ、{お泊まり会}に出発した。
{お泊まり会}は大成功、ヨングクおじさんのちょっとわからないお話に、お腹がよじれるほど笑い、
チヒョンお姉ちゃんのテレビゲームをやって、チンスクおばさんのお料理をいっぱい食べて。
 
ヨングクおじさんの隣のお布団に入ったところまでは覚えているんだ、
でも気づいたらもう朝になっていた。
「宿題をやってからじゃないと、遊びには行かないぞ。だってユジンに俺が叱られそうだ」
きのうは遊びすぎちゃって、なんにもやらなかったんだ。
チュンソンと僕は大急ぎで宿題を片づけようとした。
でも僕はさっきから気になっていることがあって、全然宿題が手につかない。
そこでチヒョンお姉ちゃんにそっと聞いたんだ。
 
********
 
「ユソン、変なこと言わないで」チヒョンお姉ちゃんが小さな声でちょっと怒ったようににらんだ。
僕はパパとママのことを話した。
僕のパパは起きてくるとすぐキッチンに立っているママの傍に行って、
「おはようユジン」ってママの肩を抱いてほっぺにポッポするの。
それからパパがママとのコーヒーを煎れるんだよ。
でもママがお寝坊したとき、パパは
「チョン・ユジン!!! 遅刻大将だな」
「ユジン、どんな楽しい夢を見て起きられなかったのかい」
からかうと、ママはパパの肩を抱いて「おはようチュンサン」ってポッポするんだ。
そこまで話したとき、チュンソンが大きな声で
「それから僕たちにポッポするんだ、ママとパパすごーく仲良しなんだよね」
「チュンソン! シー おじさんたちに聞こえちゃうよ」
「うちのパパとママが朝におはようっていうだけだから、けんかしたと思ってるの、ユソン?」
「ちがうの?」
チヒョンお姉ちゃんは返事もしないで、ポーとした顔で「いいなあ、あこがれちゃうな、そんなの」。
けんかしたからじゃないんだ、僕はそっとヨングクおじさんとチンスクおばさんを見た。
あれっ、変だ。今の話聞こえてしまったみたい。
二人とも遠いところを見ているような顔している、チンスクおばさんは目に涙が浮かんでいるみたいだ。
 
********
 
「もうだめー」
僕は悲鳴を上げて、芝生に倒れ込んだ。
ヨングクおじさん、いつもより張り切ってボールを蹴るんだから。
ほんとまるで子供みたいといつものように思ったとき、ハッとした。
 
ヨングクおじさんは、目の見えないパパの代わりをしてくれてるんだ。
パパが絶対できないことを選んで僕にしてくれてる。
 
僕の胸に熱いものがこみ上げてくるのがわかった。
走りすぎての息苦しさと何かわからない苦さが湧き出していた。
 
「ユソン、大丈夫か」ヨングクおじさんがハーハーしながら、僕の横に倒れ込んだ。
「まだまだこれからだぞ」と言いながら。
とてもこれ以上できないのは、僕だってヨングクおじさんをみてるとわかるのに。
ほんとまるで子供みたい。
 
青い空の下で僕はパパのことを想い、ヨングクおじさんを見ていた.。





冬のソナタ To the Future 2005 Copyright©. All Rights. Reserved
当サイトのコンテンツを無断で転載・掲載する事は禁じています