To the future ―未来へ― '06 Christmas

「パパとの思い出がいっぱいの場所、ねぇユソン、ママそこに行ったら涙が止まらなくなるかもしれない」



あれはいつの日のことだったのだろう、お母さんが僕にそうつぶやいたのは。




今年の春、僕は高校2年になった。
そしてある日サンヒョクおじさんと湖に来ていた。

「ユソン、あの時の約束を覚えているかい」
「ええ、僕がおじさんとお父さんが出会った高校2年になったら話してくれるという約束でしょ」
「ああそうだ・・・・・・チュンサンと会ったのは空気が冷たくって吐く息が白くなる季節、でも雪にはまだだったな・・・・・・」



サンヒョクおじさんは桟橋と言うには粗末な湖に張り出した船着場に立ち、そこにある何かを探そうとするかのように視線を泳がせた。




「あの日、僕たちはここでチュンサンのお葬式をしたんだ」
「お葬式・・・・だって・・・・」
「僕たちにはチュンサンが交通事故で亡くなったと知らされていたんだよ」
「・・・・・・・・・」
「ユジンはあの日を境に子どものように笑うこともなくなり、大人の女性のように微笑むようになった。それだって何年も経ってからだ・・・・・・」




僕とユジンが幼なじみだったのは知ってるよね。僕にとってはユジンは守るべきただ1人の人だったんだよ。
僕は心の底でいつも思っていた、「ユジンは僕のお嫁さんになるんだ」と。
ユジンも同じように僕のことを思っているに違いないと信じていた。
どうしてそんなことを思えるかって?
そうだ・・・・不思議だよね。

ユジンのお父さん、ユソンのおじいさまが病気で亡くなる前に僕は父さんとふたりでお見舞いに行ったんだ。その時・・・なんていうのかな、おじさんが僕を見て「ユジンを頼むね」って。

「ユジンを頼む」

もしかしたらもっと違う言葉だったのかもしれない。でもあの日から僕は「ユジンを守るんだ」って思っていたんだな。


「ユソンそんな複雑な顔をしなくたっていいんだよ。・・・・ここはやっぱり寒いね」
そういって、サンヒョクおじさんは煙草に火を付けた。

「小さい時僕の家でパーティがあって、おじさんたちが帰った夜遅くに、お母さんが泣いているのを見たんだ。お父さんがユジンユジンって・・・・何度もささやいて抱きしめていた」
「多分チュンサンの誕生日だな、チェリンが彼が好きなワインを持ってきたときだろう」
「なんでそれがお母さんが泣くことなの」
「・・・チェリンはイ・ミニヨンのフランス時代の恋人だったんだ」
「・・・・・・・」




驚くべき話の数々に僕は相づちを打つことさえ忘れ、聞き入っていた。

そして僕の心は粟立った。





「ユソン、冬休みになったらスキー場に行くわよ」
「スキー場?」
「そう、パパとママの大好きな場所。1週間ほどコテージを貸し切ることが出来たの・・・あら?ユソン嫌なの」
「・・・ううんそんなことはないよ、思いっ切りスノボが出来るね・・・・」
「ユソン・・・・サンヒョクと出掛けてから少し変よ」



僕はあの日からわからなくなっていた。
お父さんとお母さん・・・いや、チュンサンとユジンが幸せに暮らしているのはいろんな人の思いを踏みつけて成り立ってるいるのではないのかと。

でも、サンヒョクおじさんは最後にこう言った。
「チュンサン、いや兄さんとユジンが幸せなのはとても嬉しいよ。あのふたりは周りにあまりにも遠慮し過ぎてるんだよ。チェリンだっておんなじに感じてるよ。」

それはもしかして僕に対する慰めだったのかもしれない、と。



「ビョル早く出て来なさい、置いていくわよ」
「だってママ、おうちでクリスマスをしなきゃおじさんたちがプレゼントを持ってきてくれないかもしれない」
「まぁ・・・大丈夫よビョル。クリスマスにはみんなスキー場に集まるのよ」
「ホント!ほんと!ママ、サンヒョクおじさんもヨンゴクおじさんもチヒョンお姉ちゃんもチンスクおばさんも!」
「そうよ、チェリンおばさんもよ」
「ママ!チェリンはおばさんっていっちゃいけないのよ」
「そうだったね・・・ビョル早くパパの隣においで」
「チュンソンお兄さん、パパの隣はビョルよ」

「お父さん、みんなが集まるの」
僕は思わず聞いた。
「そうだよユソン、みんなが集まるんだ」
チュンサンの穏やかな声の底に断固したものを僕は感じた。




数日前に降った雪でスキー場は絶好のコンデションだった。
僕とチュンソンは1年ぶりの足慣らしをした後で、ゴンドラに乗って山頂に登った。

心配性のお母さんは、係りの人に「天候の急変で下りられないってことはありませんよね」と聞いていた。
「お母さん、僕たちミンソンたちと違って大丈夫だよ」
「でも・・」
「ユジン、あんなことは滅多にないんだよ。ユソン行っておいで、チュンソン気を付けてね」


「ねえお兄さんお母さんどうしてあんなに心配なのかな、普段はそんなこと言わないのに」「・・・・・・・・」




その夜、疲れているはずなのに僕は眠られなかった。
そっと起き上がり本を持ってリビングに下りていった。
暖炉の置き火が爆ぜる音がし、薄暗闇に寄り添うように座っているふたりの姿を認めた。

踵を返そうとしたとき、お父さんの温かい声が僕を呼び止めた。
「ユソン僕たちに聞きたいことがあるんじゃないのか」
僕の背中がビクッと震えた。
ゆっくりと顔を上げると、爆ぜた火の明かりに照らされ微笑んだふたりが僕を見つめていた。



「サンヒョクがね、誤って伝わったんじゃないかと心配していたよ」
「誤って?」
「そう、彼はね自分の視点だけで僕たちのことを話したと、だからユソンには私たちの言葉でも話して欲しいって」
「・・・・・何かが違うの」
「違うかもしれないし、違わないのかもしれない」
「お母さんもそう思うの」
「サンヒョクが知ってることと、お父さんとお母さんしか知らないこともあるのよ」
「だから、ユソンには聞いて欲しい」



ほんの短いひと冬ともいえない数カ月の出来事、言葉にすることの出来なかった初恋。
断ち切られた運命と各々の人生。
新たな出会いと新たなはずの恋。
誤解と別れと悲しみ・・・・・・・・・・。


何故乗り越えられて来られたんだろう。





24日クリスマスイブ、スキー場チャペルで夕方のミサが行われた。
僕たち家族は揃って出掛けた。


牧師様が「心を整えなさい。傲慢な心は謙虚になりなさい、曲がっている道はまっすぐにしなさい。険しい道は平らにしなさい。正しい道を見なさい。私たちの心の弱さ足りないものそういうものを正して神様を迎えます」


僕の中の何かが溶けた。
僕は自分の中に父と母として尊敬すべき人間の彼らを見ていただけで、チュンサンとユジンとしての彼らを見ていなかったじゃないのかと。

純粋に相手のことを思い続けたチュンサンとユジンの恋
そして今僕の目の前にいる手を繋いだふたり
僕は生まれてきてから目にしているチュンサンとユジン
誰にも聞くことでもなく誰にも恥じることでもないものを僕は見ている





「メリークリスマス!!チュンサン、ユジン!!!僕はあなたたちの子どもであることを感謝します」



今宵集まってくるチュンサンとユジンの友人に頭を垂れよう、「あなたたちがいたから僕たちがいた」





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