To the future  ― '11 誕生日 ―


 幾層にも重なった雪が2月の青空に輝き、表面のザラザラ感を残し、何事もなかったか

のように静かに水になり地面に染み込んでいく。


 堆く積まれた雪山にスコップを差し込むと、手応えなく固まりが崩れ去っていく。


 薄汚れた雪が傍らに寄せられ、まるで春登場の邪魔者かのように肩身を狭くする頃、

僕の誕生日はやってくる。





 「ごめんね、お母さんがだめだって」

 「ううん、いいんだよ。また遊ぼ」





何度も繰り返された誕生会の断り。

小学校も終わりの頃になると「今年は違うかも」の期待もなく、

母からの『おめでとうチュンサン。お祝い届いた?おばさんご馳走作ってくれた?

お友達来たの?』

電話を鬱陶しげに答えていた。







そしてあの年

「明日、僕の誕生日だから」

山のようなカートの食料品に呆れた顔をしたユジンに僕は突如としてそう言った。

一瞬痛みを浮かべたようなユジンの顔を、僕は何気なく逸らし、ラジオをつけた。

あの時のサンヒョクの選曲は何だったんだろう。







「おはよう、ユジン」

「おはよう、チュンサン」

湯気の上がったキッチンから、大きめな椀によそわれたわかめスープが運ばれて来る。

僕が夢にまで見ていた誕生日の風景。

僕の目は映し出すことが出来なかったが、僕の心は感じ取っていた。

ユジンと初めて迎えた僕の誕生日。





誕生日が嬉しくって楽しい日になったのはあの日から。





家族が増え僕の嬉しい朝も増えてくる。

「おは・・パッパ!!」

「おはようユソン・・・・ア〜ンして、わかめスープだよ。おいしいね」

「チュンサン、遅れるわよ」

「わかめスープを誕生日の息子に食べさせていたら遅れましたって言い訳するさ」

「ちょちょちょっと!!!!チュンサン」

「冗談だよ、ユジン。ね〜〜ママは心配性ですね」

「ね〜〜〜?!・・・」







「おはよう、ユジン」

「おはよう、チュンサン。お誕生日おめでとう」

「ありがとう、うれしいよ。君から祝ってもらうのが僕の幸せだよ」

ギュッと抱きしめた胸にユジンを感じた。







『普通さ、子どもがいる前であんな甘い言葉とハグハグするのか』

『普通じゃないんだよウチの親は』

『えぇえ・・普通でしょ』

『完全に普通じゃないのに慣らされてるぞ』

『ウチじゃ普通なんだよ』

『そうなんだ・・・・・・』

『でも、理想でしょ!!きっとみんなそうなるわよ』

『・・・・・・・・・多分ね・・・・・・・』

『イ・ミニヨンのThe blood vessels・・・・か』








崩れゆく雪の固まりに、この冬の思い出がひとつひとつ解け出す。


「チュンサン、もう寒くなるわ、家に入って。雪はゆっくり解けた方がいいわよ」

「ん・・もう少し。君が足を取られたら大変だ」

「あら!まるでわたしが転ぶようなことを言うのね」

「だって本当のことだろ」

「んうんもう・・・・・・風邪引いちゃうわよ」

「そうだね、ユジン」







ーーーーー今年は雪が多くって大変だったね。でもその分楽しいことも

多かったじゃない。

ええええ!!轍にタイヤがはまったことが。

違うわよ、沢山雪だるまが作れたじゃない。

君が転んで起きあがれなかったこともだね。

あら!!じゃ、電車が止まって2時間も掛けて歩いてきたこともね。

心配している君の顔が目の前でちらついて、

とても電車が動くのを待っていられなかったんだぞ・・・・・・。

今年もいっぱい思い出ができたわね。

雪を頑張って融かすのはちょっと待とうか。

そうだね、春はゆっくり来たらいいさーーーーー




Happy birthday



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