To the future  
―'07 Happy Birthday!! ユソン 下 ―



年が明けた頃には私のお腹も目立ってきた。

さすがにヘルメットで現場の指示をするのは、周りに気を遣わせ控えることにした。

もちろん、もっと早い時期からチュンサンには仕事を休むように言われ続けていたが、

「あと少し、これが終わったら・・・」
と際限もなく引き延ばしていた。





ー仕事から手を引くー
これがどんなことなのか、私には恐怖でさえあった。


彼が亡くなったと知った日から、
一生をかけて向き合える仕事を得るために勉強に打ち込んだ。

彼とそっくりなミニヨンと会った日から、
同じ現場を踏めることに
胸を奮わせた。

再びチュンサンとの別れは、
いつか仕事場で会えることを祈り、
慣れない異国の地で歯を食いしばった。

運命としか云いようのないあの日から、
妻としての比重より彼の仕事のパートナーとして生活を優先させていた。



待ちに待った尊い命。





それさえも今の私には彼とを遮るものと思えてならなかった。




「ねぇチュンサン、少し早いけど仕事を休もうと思ってるの」

「ユジン、やっと決めてくれたんだ」

「・・・ええ・・・」
ユジンの言葉を呑み込んだ様子にチュンサンは愁眉を寄せた。


「ユジンどうかしたの。言ってくれなきゃ僕にはわからないよ。
君の瞳が揺れているのも、
唇をかみ締めているのも
僕には見えないんだからね」


チュンサンの手がユジンの頬をそっと撫で下ろした。



「ユジン」

「・・・・チュンサン、私怖いの。あなたと離れてしまうのが」

「離れる・・って」

「仕事場ではいつも離れているわ、
でもやっていることは手に取るようにわかるし、同じ図面の上で会話も出来たわ、
でも、
仕事を休むことになると・・・・違うのよ」

「そんな・・ことユジン」

「そう、そんなことよ。でもねカン ジュンサンの妻であっても、
イ ミニヨンのパートナーでありたいのよ。
そんなこと考えるって悪い母親かな」

「ユジン 君がそんなことを思っていたんだ・・
・・・僕もだよ・・・・」





『予定日は来年の5月ですね』
僕は舞い上がるような喜びが治まるにつれ、不安に包まれていた。


父親ってどんなふうにするんだろう、
泣くだけで意志を表す子供に僕は対応できるのだろうか。

悪阻の時期に苦しんでるユジンに何も出来なくって、オロオロするだけの僕。

身をもって母親になっていくユジン、
実感の伴わない父親として
お腹の子供に嫉妬している自分に気が付いた。



さらに身重にも関わらず仕事に没入するユジン。



手を繋ぎ、分かり合ってるはずが・・

・・・はずで、つもりだった。



僕とユジンの心はほんの僅かすれ違った。



「エッ!!」
「どうしたのユジン」
「お腹が・・・・」
「痛いの?」
「赤ちゃんがお腹を蹴ってる」



ユジンは僕の手を取った。
「・・・・・ユジン」
声の震えとともに指も微かに強張っていた。



小さな足の形が僕の掌に感じた。

僕はあの日、父親になった。
そして僕たちは確かな夫婦になった。







ユソン、おまえは生まれてくる前から僕たちのことを思いやってくれてたんだ。

僕たちの天使、ユソン。

今、おまえと一緒に僕たちも親としての産声を上げたんだよ。

一歩ずつ一歩ずつゆっくりと進もうね。

生まれてきてくれてありがとう


             ご感想をこちらへ


冬のソナタ To the Future 2005 Copyright©. All Rights. Reserved
当サイトのコンテンツを無断で転載・掲載する事は禁じています