チェストの上にはリボンのかかった包みとカード、エアーメール
冷蔵庫にはシャキシャキのサラダ、お鍋の中はわかめのスープ
ガスレンジにはすぐに取りかかれるようにフライパン
わくわくドキドキずっと前からこの日を待ってた。
なのに・・・・
ーユソン忘れたのー
美久がユソンと結婚して初めのユソンの誕生日だった。
そう・・・・・・・
だった。
ユソンがレジデント2年目になって専門とする脳外科の勤務はハードさを極めていた。
1度手術室に入ると長時間の立ちっぱなしは当たり前で、術後患者の様態の動向を見極めるまで病院を離れることが出来ないこともしばしばだった。
昨日も絶対に診ておきたい手術があるから帰れないかもしれないと出掛けていった。
しかし直接執刀教授のフォローに入るわけではないと言っていたので今日の夜くらいには帰ってくるとだろうと美久は思っていた。
午後9時電話が鳴った。
「ユソン!」
「・・・美久さん、ユソンはまだ帰っていないのね」
それはユジンからだった。
「アッ!お母様・・すみません。ユソンだと思って・・・・」
「忙しいのねユソン。美久さんごめんなさいね、寂しい思いをさせているんじゃないの」
ユジンの優しい言葉が美久を和ませた。
「ねぇ美久さん、ジュンサンの言うことなんか聞かないで押し掛けた方が良かったわ」
「え?お父様がなんて」
「結婚して初めの誕生日だからふたりっきりがいいだろうって」
「あら!お忙しいからってお出でにならないと思ってました。違うんですね」
「そう。ジュンサンの誕生日をふたりだけで祝ったことなんてないのよ。だから気を利かせたつもりだったのよ。でもあなたが寂しい思いをすることを知っていたら・・・・ね」
「ありがとうございます、でも来年からは必ず来てくださいね」
「ええ絶対にそうするわ」
ユジンの軽やかな笑い声とジュンサン声が重なった。
「美久悪かったね、行かなくって。ユソンが帰ってきたらおめでとうと伝えて」
「お父様ありがとうございます」
日付が13日に変わった。
夜明け前、「カタッ」と微かな音がした。
美久がリビングのドアを開けるとチェストの上にあった包みをユソンが手にしていた。
「お帰りユソン」
「ただいま、これは?」
ユソンの目がテーブルのバラの花に向けられた。
「お誕生日おめでとうユソン」
「誕生日・・そうだった」
「忘れていたの?・・・・」
「・・・・すっかり、ごめんお祝いの準備をダメにしちゃったみたいだね」
「いいの、お誕生日はまた来年も来るのよ。それより朝になったらお母様達に電話をしなきゃね。心配なさってるわ」
美久の額にユソンが額をコツンとあてた。
「昨日に時間を戻してお祝いしてよ」
「いいわよユソン。でもねここじゃダメ」
ユソンの目が寝室のドアに向いた。
「あっち?」
「ん・・もう・・違うわよ。お父様達の家に行くのよ」
「え?なんで。僕は美久とふたりがいい」
「ねぇユソン・・・直接お話ししたいこともあるし・・・」
夕方、ユソンは両親の家に向かっていた。
「美久、今朝直接話したいことって言ってたよね」
「そうよ」
「なに?僕の悪口?」
「それはもう夕べお母様に話したわ」
「じゃあなに?」
「さぁ〜なんでしょ・・・・ね」
車から降りるとふたりは駆けだした。
「お父さん!お母さん!」「お母様!お父様!」
玄関のドアが開き、ジュンサンとユジンが笑顔で立っていた。
[Happy Birthday!! ユソン]