To the future  ― 誕生日 ―

ユジンはスキー場に向かって車を走らせていた。


「ユジンさん、驚かないでくださいね、理事が倒れました」
キム次長からの電話でユジンはひたすらホワイトスキー場に向かっていた。

ーチュンサン・・・・チュンサン・・・・・ー


*******************************


「パパ、今日は早く帰って来るんでしょう。夕べだって会えなかったんだよ」
ビョルはチュンサンのパンにバターを塗りながら言った。

どんなに前夜遅く帰ってもチュンサンは子どもたちと朝食のテーブルについていた。

「ビョル、パパはお仕事なのよ。無理を言わないで」
「ハイ!パパ ビョル特製のトーストよ。だってママ今年になってからずっと夜はパパの顔を見てないのよ。それに今日はパパの誕生日よ。おじさんたちも来るのにパパは遅くなるの?」

「そんなことはないよビョル、今日は早く帰って来るよ。先輩も一緒だからね」

「ビョルよかったわね。でも・・・チュンサン忙しすぎるんじゃないの。疲れた顔をしてるわよ」
チュンサンを覗き込むようにユジンが相づちを打った。
ユジンの手を包み込みながら「そんなことはないよ、疲れてないから」
チュンサンが微笑んだ。


*******************************


あの時、チュンサンの手は熱かった。
ユジンは自分を責めるように車を進めた。

今日はチュンサンの誕生日
いつものようにサンヒョクやチェリン、チンスクとヨンゴク、チョンアさん、スンリョンそしてキム次長が揃うことになっていた。
今夜早く帰るために、チュンサンとキム次長は強行な日程であのスキー場に出向いていた。

あれから
スキー場はスキーだけの時代ではなくボード、さらにはオフシーズンの活用と多岐に渡っていた。
チュンサンにとって思い入れの深いスキー場からの依頼は多忙を理由に無下に断ることは出来なかった。ましてや、若い他の者に完全に任すことも不安だった。

「理事、打ち合わせだったら担当者だけでいいでしょ」
キム次長がチュンサンが出向くという話を聞いて、理事室に飛び込んできた。
「次長、あのスキー場の雰囲気は壊したくないんです、だから担当者を連れて僕が行きます」
チュンサンはどうしても首を振らなかった。
キム次長はため息を吐きながら
「だったら私も行きますよ、あの時誰が理事の代わりをやったと思ってるんですか」
キム次長の強い声に
「・・あの時・・・・は申し訳なかった」
チュンサンの声が低くなった。
「・・理事、私とじゃなくてユジンさんと行きますか」
キム次長の惚けた声が笑っていた。


*******************************


「病院に行かなくいいんですか」
ホテルのベットに休んでいるチュンサンに次長が声を掛けた。
「ああ、もう大丈夫です。驚かせましたね すみません先輩」
「いや〜私はいいんですが・・・ね」
「何か問題でも?」
「実はユジンさんに理事が倒れたって連絡をしたんです、そのあと大丈夫だからと電話を入れてるんですが繋がらないんです。もしかしてもうこっちに向かってるかもしれませんよ」
「せんぱい・・・・・・・・・」

部屋の呼び鈴が鳴った。
「これはユジンさん・・・あのですね・・・・」
「チュンサン!!」
ベットに起きあがったチュンサンを目にしたユジンが涙を流しながらチュンサンにしがみついた。

キム次長がそっと部屋から出ていった。

「ユジン、心配掛けてごめん大丈夫だから、泣かないで」
涙を拭きながらユジンはチュンサンの頬に手を当てた。
「チュンサンどんなに心配したかわかる?・・・・お願い無理をしないで・・・」
「ユジン・・無理なんかしてないよ。でも家の方は大丈夫なの」
「うん、ちょうどチンスクは手伝いに早く来てくれてたの。だからあとはお願いをしてあるわ。でも今日帰るのは無理みたいね」


『・・・うん、チンスクありがとう。チュンサンは大丈夫よ疲れから目眩を起こしたそうよ・・・・・・うん、みんな居るんだ、ごめん心配を掛けたわね』

ユジンの電話を聞いていたチュンサンが笑いながら
「案外僕たちがいなくって、楽しんでるんじゃないの」
チュンサンをそっと睨みながらユジンが
「まぁーなんてことを。サンヒョクなんかお父様に連絡するところだったんですからね。子どもたちだって。・・・・」
ユジンの口をチュンサンの大きな手が塞いだ。
「ユジン、ふたりっきりの誕生日だよ・・・・僕はなんかとっても嬉しいよ。まるで大きな贈り物をもらったみたいだ。ユジンを独占できるんだから」
「ふたりっきり・・・・・初めてねチュンサン・・・ふたりだけなんて・・・・」
「そうだよ・・・・・・・・・」

チュンサンの手がユジンを髪を撫で背中に回された。
ユジンの睫がそっと合わされた。


その時、けたたましく部屋の電話が鳴った。
「もう〜携帯を鳴らしても出ないんだから・・・・・」
チェリンの華やかな声が受話器の外にも響いた。

ーいいみんな?せーのー
Happy birthday to you
Happy birthday to you
Happy birthday dear チュンサン
Happy birthday to you

ーチュンサン!!!誕生日おめでとうー


窓の外のゲレンデはライトアップされ、雪がしんしんと降り続く。
あの時見た景色と同じはずなのに・・・・・・。

「チュンサンお誕生日おめでとう」
「ありがとうユジン」



ご感想をこちらへ


冬のソナタ To the Future 2005 Copyright©. All Rights. Reserved
当サイトのコンテンツを無断で転載・掲載する事は禁じています